コラム

「指定濫用防止医薬品」が8成分に拡大|薬剤師が知っておくべきオーバードーズ対策の最前線

2025年11月、厚生労働省の審議会で、「指定濫用防止医薬品」にデキストロメトルファンとジフェンヒドラミンを追加することが決まりました。従来の6成分から8成分へと対象が拡大され、2026年5月1日から施行されます。

本記事では今回の制度改正の背景と、薬剤師に求められる対応について解説します。

新たに追加される2成分とは

今回追加されるのは、せき止め薬成分の「デキストロメトルファン」とアレルギー薬成分の「ジフェンヒドラミン」です。

デキストロメトルファンは鎮咳薬として広く使用されている成分で、延髄のせき中枢に作用してせきを抑えます。過量摂取すると錯乱、興奮、幻覚などの精神症状が生じることがあります。

ジフェンヒドラミンは抗ヒスタミン薬として、アレルギー用薬や睡眠改善薬に含まれる成分です。中枢神経抑制作用があり、過量摂取により意識障害、せん妄、痙攣などを引き起こす可能性があります。

これらの成分は、厚生労働省の研究班の調査で濫用実態が明らかになり、健康被害も報告されていることから、今回の指定に至りました。

指定濫用防止医薬品の全8成分

2026年5月以降、指定濫用防止医薬品は以下の8成分となります。

成分名主な用途
エフェドリン気管支拡張・鼻閉改善
コデイン鎮咳
ジヒドロコデイン鎮咳
ブロモバレリル尿素鎮静
プソイドエフェドリン鼻閉改善
メチルエフェドリン気管支拡張
デキストロメトルファン(新規)鎮咳
ジフェンヒドラミン(新規)抗アレルギー・催眠

これらの成分を含む製剤は、販売時の確認強化や外箱への注意喚起表示が求められます。なお、外用剤は現時点で対象外となっています。

若者を中心に深刻化するオーバードーズ問題

市販薬の濫用、いわゆるオーバードーズ(OD)は、若者を中心に社会問題化しています。厚生労働省の研究班の調査によると、依存症専門医療機関を受診した市販薬症例の平均年齢は29.1歳で、71.4%が女性でした。

濫用のきっかけとして多いのは、家族関係や友人関係などの対人ストレスです。「気持ちの落ち込みを改善したい」「リラックスしたい」といった動機で乱用を始めるケースが多いとされています。また、約20%の症例で入院を伴う救急搬送エピソードが認められており、深刻な健康被害につながっています。

薬剤師に求められる対応

指定濫用防止医薬品の販売において、薬剤師には以下の対応が求められます。

販売時の確認事項

他店舗・他の指定濫用防止医薬品の購入状況、購入者の氏名・年齢、購入者の状況(様子など)、大容量・複数個購入時の理由

18歳未満への販売制限

原則として小容量(5日分以下、風邪薬・解熱鎮痛薬・鼻炎内服薬は7日分以下)の1包装単位のみ販売可能で、大容量製品や複数個の販売はできない

ゲートキーパーとしての役割

濫用が疑われる購入者に対して、単に販売を断るだけでなく、悩みを抱えた本人に気づき、声をかけ、必要に応じて専門機関への相談を促す

まとめ

指定濫用防止医薬品は従来の6成分から8成分に拡大され、2026年5月から新たな規制が施行されます。薬剤師は販売時の確認を徹底するとともに、濫用の背景にある若者の孤立や心理的な問題にも目を向け、地域の医療者としてゲートキーパーの役割を担っていくことが求められるでしょう。

※本記事は2026年2月時点の情報に基づいて執筆しています。

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