ドンペリドンの妊婦への禁忌が解除|添付文書改訂のポイントと現場への影響
2026.02.09

2025年5月、吐き気止めとして広く使われてきたドンペリドン(商品名:ナウゼリン)の添付文書が改訂され、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」が禁忌の項から削除されました。1982年の承認以来、約43年ぶりとなる大きな変更です。
本記事では改訂の経緯やポイント、薬剤師が押さえておきたい実務上の変化について解説します。
目次
いつから制限解除になったのか
2025年4月25日に開催された厚生労働省の安全対策調査会で審議が行われ、禁忌解除の方針が了承されました。その後、2025年5月20日付の通知により添付文書が正式に改訂されています。
もともとドンペリドンが妊婦禁忌とされた根拠は、開発時に実施されたラットの試験で、臨床用量の約65倍(200mg/kg)という高用量で胎児に催奇形性が認められたことでした。しかし、臨床用量の約23倍にあたる70mg/kg/日の用量では催奇形性が認められなかったこと、国内外の臨床データから妊娠初期に使用しても胎児への影響は低いと判断されたことなどから、今回の改訂に至りました。
改訂のポイント
今回の改訂内容は以下のとおりです。
- 禁忌の項:「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」を削除
- 妊婦の項:「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」に変更
禁忌解除の根拠として、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」が以下の3点を報告しています。
- 臨床用量の約23倍にあたる用量(70mg/kg/日)ではラットに催奇形性が認められなかった
- 日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン産科編2023」で、「妊娠初期のみ使用された場合、臨床的に有意な胎児への影響はないと判断してよい医薬品」に記載がある
- 海外の添付文書では妊婦への使用が禁忌とされていない
妊婦への治療に使えるメリット
ドンペリドンは慢性胃炎に伴う吐き気や胃もたれなどの消化器症状に適応を持つ薬です。妊娠悪阻(つわり)の症状はこうした消化器症状と似ているため、女性が妊娠に気づかないうちにドンペリドンを処方されるケースがこれまでもありました。
こうしたケースでは、妊娠判明後に「禁忌のお薬を飲んでしまった」と知り、強い不安を感じる方が少なくありません。なかには、その不安から人工妊娠中絶を選択する可能性も指摘されていたため、日本産科婦人科学会や日本神経学会が禁忌解除を要望していた経緯があります。
今回の改訂により、妊娠に気づく前にドンペリドンを服用していた女性が、過度な不安を感じることなく安心して妊娠を継続できる環境が整えられたといえるでしょう。
ただし、つわり自体はドンペリドンの適応症ではありません。今回の禁忌解除は、つわりの治療に積極的に使用することを推奨するものではない点に注意が必要です。
現場はどう変わるか
これまで、妊娠の可能性がある女性の吐き気に対しては、添付文書上の制限がないメトクロプラミド(商品名:プリンペラン)が優先的に選ばれていました。今回の改訂により、ドンペリドンも選択肢に加わることになります。
ドンペリドンはメトクロプラミドと比べて血液脳関門を通過しにくく、錐体外路症状などの中枢性の副作用が出にくいという特徴があります。この点で、ドンペリドンが処方しやすくなったことは、臨床現場にとって大きなメリットといえます。
薬剤師としては、以下の点を押さえておくことが大切です。
- 禁忌が解除されても「有益性投与」であり、漫然とした投与は避ける
- つわりへの適応はないため、処方意図の確認が必要な場合がある
- 妊娠に気づかず服用していた方には、今回の改訂内容をもとに不安を和らげる対応ができる
まとめ
ドンペリドンの妊婦禁忌は、2025年5月20日付の添付文書改訂により正式に解除されました。国内外の疫学データやガイドラインの記載をもとに、妊娠初期の使用で胎児への影響は低いと判断されたことが背景にあります。
ただし、禁忌の解除は「有益性投与」への変更であり、妊婦への積極的な使用を推奨するものではありません。つわりはドンペリドンの適応外である点も変わっていません。
薬剤師にとっては、妊娠の可能性がある女性への制吐薬の選択肢が広がったことに加え、妊娠に気づかず服用していた方への情報提供がしやすくなった点が、今回の改訂の大きな意義といえます。
※本記事は2026年2月時点の情報に基づいて執筆しています。
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