救急認定薬剤師とは?|仕事内容・取得要件・申請の流れをわかりやすく解説
2026.06.13

救急医療の現場では、刻一刻と変化する患者の状態に合わせた薬物療法の判断が求められます。その専門性を客観的に示す資格が、日本臨床救急医学会が認定する「救急認定薬剤師」です。
救命救急センターやICUでのキャリアを思い描き、取得を検討し始めた方も多いのではないでしょうか。
一方で、取得には前提資格や数年単位の実務経験など複数の要件があり、全体像をつかみにくい資格でもあります。
本記事では、救急認定薬剤師の定義から仕事内容、取得要件、申請・試験の流れまでを、学会の公式情報に基づいて整理しました。
救急領域でのキャリアを計画的に準備するための参考にしてください。
目次
総合病院門前の薬局で勤務中(7年目)。研修認定薬剤師、NR・サプリメントアドバイザーの資格を取得。 在宅や学校薬剤師など幅広く活動しています!
2児のママ薬剤師をしながら、医療ライターとしてさまざまな記事を執筆しています。
救急認定薬剤師とは?日本臨床救急医学会が認定する資格
救急認定薬剤師とは、救急医療における薬物療法に関する高度な知識・技能を持つ薬剤師を、日本臨床救急医学会が認定する資格です。
学会が独自に運営する認定制度であり、薬剤師免許とは別に、救急領域の専門性を客観的に証明できます。
制度は日本病院薬剤師会の協力を得て、2011年度(平成23年度)から実施されてきました。
高度な知識・技術・倫理観を備えた薬剤師を養成し、国民の健康に貢献することが制度の目的です。
認定審査は毎年1回行われており、2026年度で第15回を迎えます。認定者の一覧は学会公式サイトで公開されているため、所属施設や地域にどのような認定者がいるかを確認することも可能です。
参考:救急専門・認定薬剤師について|日本臨床救急医学会
救急認定薬剤師の仕事内容
救急認定薬剤師の主な仕事は、救急患者に対する薬物療法を薬学的な視点から支えることです。
活躍の場は救命救急センター、救急外来、ICU(集中治療室)が中心で、災害現場での医療支援に関わる場合もあります。
救急の現場では、意識障害などにより患者本人から情報を得られないケースが少なくありません。
限られた情報から薬学的な評価を行い、治療方針の決定に貢献することが期待されています。
主な業務は次のとおりです。
- 持参薬やお薬手帳による服用歴の確認、原因薬剤の推定
- 急性中毒への対応、相互作用の評価
- 抗菌薬や鎮痛・鎮静薬の投与設計、薬物血中濃度の管理
- 医師・看護師への迅速な処方提案、医薬品情報の提供
一刻を争う場面で医師や看護師と治療方針を共有し、チーム医療の一員として薬の専門家の役割を果たすことが、救急認定薬剤師の専門性といえるでしょう。
救急認定薬剤師の認定取得要件
取得要件は学会の制度規則・細則で定められており、主な要件は次の8つです。
- 日本の薬剤師免許を有していること
- 病院・診療所での勤務歴が5年以上あり、うち2年以上救急医療に従事していること
- 日本臨床救急医学会の正会員歴が2年以上あり、会費を完納していること
- 規則で定められた認定薬剤師資格(前提資格)を有していること
- 救急医療の業務を通じて治療に参加した症例25例以上を提出していること
- 指定された学術集会等で50単位(必修30単位以上)を取得していること
- 認定委員会が開催する講習会を受講していること
- 所属施設長または日本臨床救急医学会評議員の推薦があること
このほか、ICLSコースの受講またはBLS/AEDコースの指導を証明する書類も、申請時にあわせて提出します。
前提となる認定薬剤師資格
前提資格として認められるのは、次のいずれかです。
- 日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師
- 日本医療薬学会が認定する専門または指導薬剤師
- 日本臨床薬理学会が認定する認定または指導薬剤師
- 日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
- 日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)のJPALS認定薬剤師(CLレベル5以上)
※日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師は2022年度申請時まで有効
取得が必要な単位の内訳
50単位のうち、必修30単位以上は日本臨床救急医学会の学術集会に関する単位で構成されます。
主な内訳は次のとおりです。
| 区分 | 項目 | 単位数 |
| 必修 | 日本臨床救急医学会学術集会への参加 | 15単位 |
| 必修 | 同学術集会での発表(発表者/共同発表者) | 15単位/5単位 |
| 選択 | 日本病院薬剤師会地方会(ブロック大会)への参加 | 10単位 |
| 選択 | 指定された関連学会の年次学術集会への参加 | 10単位 |
| 選択 | 日本臨床救急医学会雑誌での論文発表(筆頭著者/共同著者) | 30単位/10単位 |
| 選択 | 認定委員会が認定した研究会への参加 | 5単位 |
学術集会への参加だけでなく、研究発表や論文発表も単位の対象になります。
日々の業務での気づきを発表につなげると、効率的に単位を積み上げられるでしょう。
なお、提出する症例には内容の要件も定められています。
循環器疾患・外傷・急性中毒などのA項目(疾患領域)から4項目以上を選択し、選択した項目ごとに2症例以上の記載が必要です。
あわせて、気道・呼吸管理、感染症治療、鎮痛・鎮静・せん妄管理などのB項目(業務内容)から6項目以上を含めなければなりません。
日頃から幅広い症例に関わり、記録を残しておくことが大切です。
参考:救急専門・認定薬剤師制度規則|日本臨床救急医学会
救急認定薬剤師の取得までのロードマップ
要件は多いものの、段階的に準備すれば計画的な取得が可能です。薬剤師5〜6年目以降での申請を見据え、3つのステップで進めていきましょう。
ステップ1:前提資格の取得(1〜3年目の目安)
まず、研修認定薬剤師など規則で指定された認定資格のいずれかを取得します。
並行して日本臨床救急医学会へ早めに入会しておくと、会員歴2年以上の要件を無理なく満たせるでしょう。
ステップ2:症例と単位の積み上げ(4〜5年目の目安)
救急医療に従事しながら、治療に参加した症例25例の記録を蓄積します。
あわせて学術集会への参加や研究発表で50単位(必修30単位以上)を取得してください。
学会が主催する学術集会には、少なくとも1回の参加が必要です。
ステップ3:申請・講習会・認定試験
要件がそろったら申請書類を準備し、認定委員会が開催する講習会を受講したうえで、年1回の認定試験に臨みます。
申請から認定・更新までの流れと費用
新規の認定申請期間は毎年3月1日〜5月31日です。
認定申請書、単位取得証明書、症例一覧、施設長の証明、推薦状などの書類を提出します。
認定試験は年1回実施され、2026年度の公示では9月開催・試験時間90分の予定です。
出題は学会と日本病院薬剤師会が監修するテキストを中心に、救急医療の薬物療法に関する広い範囲から行われます。
不合格となった場合の再受験は可能ですが、申請手続きから再度行う必要があるため、計画的な準備が求められます。
費用は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
| 申請手数料 | 10,000円 |
| 認定料(新規) | 20,000円 |
| 更新手数料 | 10,000円 |
| 認定料(更新) | 10,000円 |
認定期間は5年間で、更新申請の期日は毎年6月末日です。更新には次の要件を満たす必要があります。
- 引き続き学会の正会員であること
- 80単位(必修45単位以上)の取得(学会主催の学術集会に1回以上参加)
- 認定委員会が開催した講習会を2回以上受講
- 前提資格の継続維持(2026年3月30日の細則改正で追加、令和11年度の更新審査から確認予定)
前提資格の更新も含めた長期的な学習計画を立てましょう。
参考:救急専門・認定薬剤師 制度・規則|日本臨床救急医学会
救急専門薬剤師との違い
救急専門薬剤師は、2022年9月の制度規則改正で新設された上位資格です。両者の違いを比較すると、次のようになります。
| 項目 | 救急認定薬剤師 | 救急専門薬剤師 |
| 位置づけ | 救急領域の基盤となる資格 | 実践・研究・教育で指導的役割を担う上位資格 |
| 主な要件 | 勤務歴5年以上(救急2年以上)・会員歴2年以上 | 救急認定薬剤師として5年以上従事・会員歴7年以上 |
| 症例報告 | 25例以上 | 10例以上(過去5年間) |
| 研究実績 | 規定なし | 査読のある学術雑誌への筆頭論文、学会発表2回以上など |
| 審査方法 | 筆記試験 | 口頭試問 |
救急専門薬剤師も5年毎の更新制で、更新時には症例5例の提出などが求められます。
まず救急認定薬剤師を取得し、経験と研究実績を重ねて救急専門薬剤師を目指す流れが、救急領域のキャリアパスとして示されています。
薬剤師の継続的な学びを支えるために
救急認定薬剤師を目指すうえでは、研修認定薬剤師などの前提資格の取得・維持と、日々の継続的な研鑽が欠かせません。
薬剤師の生涯学習を支援するアプリ「ためとこ」は、薬学ゼミナール生涯学習センター(実施機関コード:G13)が運営する研修認定薬剤師制度のプロバイダーです。
「ためとこ」で取得できる単位は薬ゼミ生涯学習センター(G13)が発行するものであり、日本薬剤師研修センターやJPALSとは異なる制度のため、救急認定薬剤師の前提資格として直接利用することはできませんが、
テキストラーニング(最短5分)、ショート動画(最短10分)、セミナー動画(90分程度)といった講座を、1分学習=1pt・90ptで1単位という仕組みでスキマ時間に積み重ねられる点は、継続学習の心強い味方になるでしょう。
「ためとこ」以外で取得した単位も登録できるため、単位管理ツールとしての活用も可能です。
料金は、単位管理・認定申請のみの無料プランのほか、月額プラン990円、10単位プラン14,300円/年、20単位プラン16,500円/年、40単位パック19,800円/年が用意されています。詳しくは受講の流れと料金プランをご確認ください。
救急領域でのキャリアは、日々の学びの積み重ねから始まります。
自分に合った学習スタイルを見つけ、計画的に準備を進めていきましょう。