疑義照会のポイント|処方意図を読み解く力と伝え方のコツ
2025.12.10

疑義照会を「医師に失礼ではないか」「自信がない」と感じる薬剤師も少なくありません。しかし実際には、疑義照会こそ薬剤師の専門性を発揮し、安全で質の高い医療を支える重要なプロセスです。 この記事では、疑義照会の意義から準備、伝え方、記録方法までを整理します。
目次
疑義照会の意義と役割
疑義照会は、処方内容に疑問や不明点がある場合に、薬剤師が医師へ確認を行う行為です。 この業務は薬剤師の裁量ではなく、法律で義務付けられた責務でもあります。
第二十三条:薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。
第二十四条:薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。
つまり、疑義照会は「医師の判断を疑う行為」ではなく、「患者の安全を守るための法的義務」です。薬剤師が確認を行うことで、誤投与や相互作用の防止、過量投与の回避など、医療事故を未然に防ぐ役割を果たしています。
実際、全国の薬局における疑義照会率は約2~3%とされていますが。このうち相当数が処方変更につながっており、医療費の削減や安全性の向上に貢献していることが報告されています。
つまり、疑義照会は単なる確認作業ではなく、「患者の命を守り、医療の質を高めるプロセス」そのものなのです。
疑義照会の前段階にすべきこと
疑義照会をスムーズに行うには、日ごろから「なぜこの薬?」「なぜこの量?」と考える習慣を持つことが大切です。薬歴や検査値、服薬状況を丁寧に確認し、処方意図を推測する力を養いましょう。
照会すべきか迷ったときは、以下のような観点で判断します。
- 添付文書と異なる用量・用法
- 併用禁忌薬や重複投薬の可能性
- 患者の症状や検査値と薬剤が一致していない
- 処方の目的が不明確
照会すべきか迷ったときに備えて、自分なりの判断基準を持てるよう、新人薬剤師のうちから意識して業務に取り組むことが大切です。 早い段階からその意識を身につけておくことで、疑義照会への苦手意識も自然と薄れていくでしょう。
疑義照会を行う際のポイント
疑義照会を実際に行う場面では、「どのように伝えるか」「どんな順序で話すか」が重要です。ここでは、疑義照会を円滑に進めるための基本的な流れと、伝え方のポイントを解説します。
事前準備
まず、患者情報・疑義の内容を整理しておきましょう。事前に資料をそろえることで、医師とのやり取りがスムーズになります。
伝え方のコツ
伝える順序は「結論→理由→代替案」。たとえば「〇〇の処方について確認させてください。通常用量は○○mgですが、今回の処方は△△mgとなっています。患者様の状態から見て、この用量で宜しいでしょうか」といった具合に、要点を簡潔に伝えます。 結論を先に伝えることで、医師の時間を無駄にせず、信頼される対応につながります。
電話時のマナー
電話口では「薬局名・担当薬剤師名・患者生年月日・患者名」を明確に伝え、診察中であれば折り返しを依頼しましょう。医師の立場を尊重し、落ち着いた口調を心がけることで、建設的な対話が生まれます。
疑義照会は「指摘」ではなく「確認」です。 お互いが患者の利益を第一に考える姿勢を見せることが、信頼関係を築く第一歩となります。
記録内容と書き方
照会後は、処方せん備考欄に内容を正確に記録します。記載すべき基本項目は以下の通りです。
- 実施日時
- 担当薬剤師名
- 対応した医師名
- 照会内容の要点
- 医師の回答・変更内容
たとえ処方内容に変更が生じなかった場合も疑義照会を行った事実を残すため、必ず記載するようにしましょう。
正確な記録は、自分だけでなくチーム全体の安全管理にも役立ちます。
まとめ|疑義照会は薬剤師の専門性を示す場
疑義照会は、単なる確認ではなく、薬剤師が医療チームの一員として専門性を発揮する重要なプロセスです。法的にも義務づけられ、実際に医療事故防止や医療費削減に寄与していることがデータで示されています。
「迷ったら確認する」という姿勢は、決して臆病ではありません。むしろ、患者の命を守るための最も誠実な判断です。疑義照会を通じて医師・患者との信頼を深め、より安全で質の高い医療を支える存在を目指しましょう。
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