薬事日報に「ためとこ」が掲載されました|薬剤師の“学ぶ楽しさ”を届ける取り組みが紹介
2026.04.08

2026年4月6日、薬剤師向け専門紙「薬事日報」にて、つなぐ薬局 鈴木邦彦先生が「ためとこ」について語ってくださいました。薬剤師教育の第一線でのご経験をもとに、現場ですぐに活かせる実践的な研修内容や、その価値についてご紹介いただいています。
本記事では、薬事日報に掲載された内容を引用してご紹介します。
目次
薬剤師に学ぶ楽しさ伝える
「ためとこ」研修コンテンツが好評
医学アカデミーYTLが提供する薬剤師向け生涯学習支援アプリ「ためとこ」で、つなぐ薬局学術企画運営室の鈴木邦彦氏が手がける研修コンテンツが好評を博している。
人気の理由は、薬剤師に学ぶ楽しさを伝える点にある。
研修では、疑義照会や服薬指導の場面を題材に、医師や患者とのコミュニケーションで実際に起きがちな失敗例を取り上げ、明日からすぐに実務に生かせる内容を提示している。まずは薬剤師自身に学ぶことの面白さを実感してもらい、その学びを業務に活用することで、患者から「薬剤師がいて良かった」と感謝される――。
こうした好循環を体感してもらうための、学びのスタートラインに立ってもらうことが狙いだ。
実践的な研修内容提示
トラブルの原因掘り下げる
「ためとこ」は病態・薬物治療や薬学管理のノウハウ、癌患者への対応、薬局業務の質向上、在宅医療など医師や薬剤師が監修した200を超えるコンテンツを提供しているが、鈴木氏の研修は中でも目を引く。
研修内容は、患者とのコミュニケーションの中で生じるトラブルを題材に、その原因や対処法を掘り下げるなど、明日からの薬剤師業務に生かせる実践的なものとなっている。
鈴木氏は「本当はやりたいことがあるのに自分でブロックをかけている人たちや、成長が停滞していて薬剤師をやっていてもつまらないと思っている人たちに、薬剤師は面白いと気づかせたい」と語る。
鈴木氏は、祖父母が薬局を経営し、父が循環器内科医という、医療との関わりが深い家庭で育った。薬剤師という職業そのものに強い関心があったわけではないが、「祖父母が好き」「医療分野で人の役に立ちたい」という思いから導き出した進路が病院薬剤師だったという。医師や看護師と連携し、チーム医療の一員として活躍する病院薬剤師の姿に憧れを抱いていた。
病院薬剤師としてのキャリアを始める前には、大学院研究生として海外留学を経験。留学先では、医師から信頼され、中心静脈栄養や抗菌薬設計といった高度な業務を担う病院薬剤師の姿を間近に見た。
一方、日本に戻り病院薬剤師として勤務する中で、臨床経験を積むことができた反面、退院した心不全患者がしばらくすると再入院してしまうという地域医療の課題を痛感するようになった。患者を担当する薬剤師に「普段どのような服薬指導をしているのか」と問いかけることもあったという。
地域医療を変えなければならないとの思いから、鈴木氏は病院薬剤師から薬局薬剤師への転職を決断した。そこで目の当たりにしたのは、医療機関から応需した処方箋について、処方意図を十分に評価しないまま調剤が行われている現実だった。医療機関と薬局の関係性が崩れれば、処方箋が来なくなるという経済的事情が背景にあったが、「薬局薬剤師が医師に意見を言いにくい環境がある」と痛感したという。
また、鈴木氏が休暇を取得していた日に、末期癌患者に抗菌薬が処方されたが担当していた薬剤師は薬を準備するだけで患者に当日渡さず、その対応を鈴木氏に任せたという。属人的な業務体制に限界を感じ、薬剤師全体の底上げが必要だと考えるようになった。
薬剤師として学び続けられる、専門性を磨くことができる環境に身を置きたい。
新たな活躍の場として選んだのが、在宅専門薬局である「つなぐ薬局」だった。
「どうすれば薬剤師を成長させられるのかを本気で考えている職場だ」と鈴木氏。学術企画運営室という立場で薬剤師の育成役を担っている。
鈴木氏が生涯学習の課題として挙げるのが、「学ばなくても薬剤師業務が成立してしまう環境」だ。
処方箋を受け、調剤して患者に薬を渡せば、責任を問われることは少ない。その結果、薬剤師として成長する意義や学ぶ意味が希薄化しているという。
もう一つの課題は、「薬剤師の臨床能力が十分に評価されない環境」だ。調剤報酬において、薬剤師業務の評価構造が固定化されており、学びと成長を後押しする仕組みが十分に機能していない側面もあると指摘する。
こうした課題意識から生まれたのが、学ぶ楽しさを育む教育だ。
「領域ごとの知識を学ばせるのはあくまでも手段。研修を通じて、学ぶこと自体が面白いと感じてもらうことが重要」と語る。
学ぶ楽しさとその学びが患者の役に立った経験、さらに患者や多職種から感謝される体験をつなぐ好循環を生み出すというストーリーこそが鈴木氏の薬剤師教育メソッドである。
コミュニケーションを重視
自身の失敗例も題材化
「ためとこ」の研修コンテンツでは、医師への疑義照会の具体的な手法をはじめ、現場のトレンド、新人がつまずきやすい点、ベテランでも判断を誤りがちな事例を取り上げている。
中でも重視しているのが、患者や多職種とのコミュニケーション術だ。鈴木氏自身や同僚薬剤師が経験した失敗例も教材化している。
例えば、抗菌薬の1日3回投与が処方された患者について、服用負担を踏まえ1日1回投与への変更が可能かどうかを、医師ではなく医療機関の事務員を介して伝えたところ、看護師経由で情報が伝わり、医師から「抗菌薬の処方がおかしいと言いたいのか」と抗議を受けた。患者の負担軽減という意図が正確に伝わらなかった経験から、医師と直接コミュニケーションを取る重要性を研修で強調している。
また、複数薬剤を服用している患者について医師と協議し、1剤を中止したところ、患者から「なぜこの薬をやめるのか」とクレームを受けた事例も研修内容に取り入れている。「患者にとっては、その薬が人生を支えてくれた存在だったというエピソードを受け止めきれなかった」と振り返り、患者が治療方針に納得してもらうよう薬剤師が丁寧に説明を行う重要性についても学びにつなげている。
受講者を飽きさせないよう、話し方や距離感にも工夫を凝らす。他の講演に参加しては改善点を見つけ、興味を引き続けるための話法や構成を磨いている。
「心がけているのは、受講者に考えさせる時間を作ること」。記憶に残りやすく、双方向性のある研修を意識している。
今後は、学びの入り口だけではなく学修後のフォローアップを重視し、3カ月間の伴走型強化講座の実施も視野に入れる。質疑応答は無制限とし、2週に1回のペースでコンテンツを展開しながら学びの定着を図る方針だ。
さらに、在宅療養患者を対象とした医師への処方提案力を高める講座も検討中で、往診への同行を通じて問題発見力や実践力を養う過程を支援する。
鈴木氏は「AI時代だからこそ、患者の生活に寄り添い、個別最適化した処方設計を伴走型で導ける薬剤師の育成が必要になる。そうした薬剤師が一人でも増えるよう自分にできることを続けていきたい」と語る。
※本記事は薬事日報(2026年4月6日号)「薬剤師に学ぶ楽しさ伝える‐「ためとこ」研修コンテンツが好評」より引用しています。
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