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薬剤師のタスク・シフト/シェアとは?医師から移る業務と病院ごとの実施率

医師の時間外労働の上限規制を背景に、医師の業務の一部を他の医療関係職種が担うタスク・シフト/シェアが推進されています。
令和3年の厚生労働省の通知では、薬剤師が担うことが可能な業務の具体例として、周術期の薬学的管理から自己注射等の実技指導まで6つが示されました。
ただし、実際にどの業務をどこまで担うかは、医療機関の体制や取り決めによって異なります。本記事では、通知で示された6つの業務と実施上の留意点、施設ごとの実施状況、さらに薬局薬剤師が医師の負担軽減に関われる場面を解説します。

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薬剤師へのタスク・シフト/シェアが進められている理由

タスク・シフト/シェアは、医師の業務の一部を他の医療関係職種が担う取り組みです。

厚生労働省は令和3年9月30日に、医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアを早急に進めるよう求める通知を発出しました※1。「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」の議論を踏まえて整理されたものです。

通知では、医療安全の確保と各職種の専門性を前提に、各個人の能力や医療機関の体制、医師との信頼関係も踏まえて進めるとしています。

推進の背景は医師の時間外労働の上限規制

タスク・シフト/シェアは、医師の時間外労働の上限規制が背景となり推進されました。上限規制の対象になるのは、病院や診療所で勤務し、診療を直接の目的とする業務を行う「特定医師」です。介護老人保健施設と介護医療院に勤務する医師も含まれます。

特定医師の時間外・休日労働時間には上限が設けられ、令和6年4月に適用されました※1。上限の水準は4つあります。1年の上限はA水準で960時間、連携B水準とB水準、C水準で1,860時間です※2

医師の労働時間の短縮を進める手段の一つとして、医師以外の医療関係職種が実施できる業務の移管が求められました。薬剤師へ移せる業務の具体例は、入院と外来の薬物療法に関する業務です。

タスクシェアとの違いは担当そのものが移ること

タスクシフトは担当そのものが医師から他の職種へ移ること、タスクシェアは一つの業務を複数の職種で分け合うことを指す語として使われています。

ただし、令和3年の通知では両者を区別しておらず、タスクシフトとタスクシェアの間に厳密な線引きはありません。

薬剤師へ移せる業務のなかには、医師等と協働して実施するものも含まれます。プロトコールに基づく薬物治療モニタリングや検査のオーダーがこれにあたります。

※1 出典:厚生労働省「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」(2026年9月1日閲覧)
※2 出典:厚生労働省労働基準局「医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A」(2026年9月1日閲覧)

医師から薬剤師へ移される6つの業務

医師から薬剤師へ移せる業務の具体例は、令和3年の通知に6つ示されています※1。この6つがすべてではなく、何をどこまで移すかは医療機関ごとの判断です。

通知では、周術期・病棟・薬物療法に関する説明を「薬剤師を積極的に活用することが考えられる」、投与量の変更・処方支援・実技指導を「可能である」と書き分けられています。

周術期の薬物療法を支える薬学的管理

周術期における薬学的管理等の業務は、手術前・手術中・手術後の3つに分かれます。

手術前は、患者の服用中の薬剤とアレルギー歴、副作用歴の確認です。術前中止薬の患者への説明も対象です。プロトコールに基づく術中使用薬剤の処方オーダーの代行入力と、医師の処方後の払出しも、手術前の業務に含まれます。

手術中には、麻酔薬等の投与量のダブルチェックと、鎮痛薬等の調製があります。

手術後は、患者の状態を踏まえた鎮痛薬等の投与量・投与期間の提案と、術前中止薬の再開の確認を含む薬学的管理です。

代行入力とは、医師が確認・署名等を行うことを前提に、医師以外の者が電子カルテに処方や検査の指示等を入力することです。薬剤師は必要に応じて疑義照会や処方提案を行います。

病棟における薬剤管理・調製を担う業務

病棟等における薬学的管理等の業務は、2つに分かれます。1つは病棟配置薬や調剤後の薬剤の管理状況の確認です。

もう1つは薬剤の準備に関わる業務です。高カロリー輸液等の調製、患者に投与する薬剤が適切に準備されているかの確認、配合禁忌の確認、推奨される投与速度の提案が該当します。

プロトコールに基づく投与量や服薬方法等の変更

令和3年の通知でいうプロトコールとは、「事前に予測可能な範囲で対応の手順をまとめたもの」です。

医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づき、薬物治療モニタリング(TDM)や検査のオーダーを医師等と協働して実施します。検査結果等を確認して治療効果等を確かめ、医師の処方の範囲内で投与量・投与期間を変更することも可能です。

プロトコールに基づく薬学的管理の結果を踏まえて、服薬方法や薬剤の規格等を変更することもできます。服薬方法の変更にあたるのは、粉砕・一包化・一包化対象からの除外などです。薬剤の規格等の変更には、内服薬の剤形変更や、内服薬・外用薬の規格変更などが含まれます。

投与量・投与期間の変更でも、服薬方法や規格の変更でも、医師や看護師等との十分な情報共有が必要です。

病状が不安定であるなど専門的な管理が必要な場合は、医師との協働が必要です。入院患者の持参薬について、院内採用の同種同効薬への変更処方オーダーを代行入力し、医師の処方後に払い出すこともできます。

治療スケジュールと副作用の説明の引き継ぎ

薬物療法に係る治療スケジュール、有効性、副作用等を患者へ説明する業務が該当します。副作用軽減のための対応方法と、記録の実施等についての説明も対象です。

患者の苦痛や不安を軽減するため、薬物療法に関する患者の相談に応じ、薬学的知見に基づく指導を行うことも含まれます。医師が治療方針を決める場面と、その後の薬の説明を担う場面が分かれます。

持参薬と検査値の確認を踏まえた処方の提案

入院患者への処方支援は、必要に応じて行える取り組みです。

入院時の持参薬を確認するとともに、複数の内服薬が処方され、薬物有害事象の存在や服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等のおそれのある患者の処方内容を総合的に評価します。

アレルギー歴と副作用歴も確認し、医師と綿密に連携します。確認するのは、診療録等による服薬内容、バイタルサイン、腎機能と肝機能に関する検査結果です。回診やカンファレンスに参加して患者の状態を把握したうえで、処方提案を行います。

薬剤師が持参薬を確認することで、有害事象の回避、紹介状との相違の発見、手術前の投与禁忌薬の回避に寄与した事例が確認されました※3

さらに外来診療の場面においても、医師の診察の前に、残薬を含めた服薬状況や副作用の発現状況等を薬学的な観点から確認し、必要に応じて医師へ情報提供することで、医師の負担軽減に繋がることが期待されています。

練習用注射器を用いた自己注射の実技指導

服薬指導の一環として、糖尿病患者等の自己注射や自己血糖測定について実技指導を行えます。練習用注射器等を用いた注射手技等の指導と、患者が正しい手順で注射できているかの確認が該当します。

ただし、薬剤師が患者に対して注射等の直接侵襲を伴う行為を行うことはできません。通知において「できない」と明記しているのは、6つの具体例のなかでこの一文だけです。

※1 出典:厚生労働省「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」(2026年9月1日閲覧)
※2 出典:厚生労働省「病院薬剤師タスクシェアおよび確保・定着/離職防止に係る調査報告書」(2026年9月1日閲覧)

タスク・シフト/シェアの実施率と施設間の差

タスク・シフト/シェアの実施率は、同じ取組でも施設の体制によって大きく分かれます※1。実施率は、令和4年度の調査で10の取組について測られた値です。10の取組は平成22年の通知にて挙げられた業務に対応しており、令和3年の通知の6業務そのものの実施率ではありません※2

処方提案と持参薬確認の実施率は9割を超える

病棟薬剤業務実施加算を算定し100床あたり薬剤師7名以上の層では、医師への積極的な処方提案が93%、持参薬を確認したうえでの服薬計画の提案が96%、モニタリングに基づく薬剤変更等の提案が98%でした。

加算を算定せず1名以上3名未満の層でも、持参薬確認と服薬計画の提案は69%です。10の取組すべての実施率は、次の表※1のとおりです。

取組加算あり・7名以上(n=241)加算なし・1〜3名未満(n=782)
プロトコールに基づく変更・検査のオーダー62%21%
積極的な処方提案93%55%
薬物療法を受けている患者への薬学的管理93%53%
モニタリングに基づく薬剤の変更等の提案98%43%
前回と同一内容の処方提案63%27%
外来化学療法のICと薬学的管理63%7%
持参薬確認と服薬計画の提案96%69%
副作用確認のための分割調剤14%9%
抗がん剤等の無菌調製91%15%
薬剤に関する相談体制の整備82%46%

プロトコールに基づく変更は6割台にとどまる

プロトコールに基づく変更と検査のオーダーは、加算を算定し100床あたり薬剤師7名以上の層で62%です。加算を算定せず1名以上3名未満の層では21%にとどまります。病床規模別では、100床未満で加算を算定し薬剤師7名以上の層で71%に達します。

副作用の発現状況を確認するための分割調剤は、病床規模全体の10層のいずれでも20%未満でした。

令和2〜3年度の厚生労働科学研究の量的調査では、多くの施設でタスク・シフト/シェアが行われていることが明らかになりました※3。一方で、その業務量は1週間で10時間程度と、かなり少ないものでした

配置人数と病棟業務の体制で実施率が大きく変わる

抗がん剤等の適切な無菌調製は、加算を算定し薬剤師7名以上の層で91%、加算を算定せず1名以上3名未満の層で15%です。外来化学療法のインフォームドコンセントと薬学的管理は、同じ2層で63%と7%でした。

薬剤師外来を進めるための条件は、次の4つです※4

  • 院内の医療職の理解
  • 専任の薬剤師の確保
  • 薬剤師の人材育成
  • 院内のスペースやブースの確保

病棟への薬剤師の配置が十分に行えていない医療機関では、薬剤師外来に専任の人員を置くことは難しい状況です。

医師との認識の違いが課題に挙がっている

医師との認識の違いは、タスク・シフト/シェアが比較的進んでいる外来がん化学療法の現場で課題に挙がっています。課題を聞き取ったのは、厚生労働科学研究の調査です。2022年度から2023年度に、6施設31名の薬剤師へグループディスカッション形式のインタビューが行われました。

進めていくうえでの課題として、次の4つが挙げられました。

  • タスク・シフト/シェアに対する医師の認識の違い
  • 薬剤師と医師の業務の明確な線引きの難しさ
  • 業務量過多および人員不足
  • 業務を担う薬剤師の知識への不安

医師へのインタビューでは、薬剤師のマンパワーおよび知識に対する不安が挙がっています。他の診療科でのタスク・シフト/シェアに対する受け入れの違いも、課題の1つです。

通知にて挙げられた意識改革の手段には、管理者向けのマネジメント研修や医師全体への説明会、各部門責任者への研修、全職員向けの研修があります。一部の職種のみ、または管理者のみの意識改革では、容易に進みません※5

有用性を評価して示すことが推進につながる

タスク・シフト/シェアの有用性を評価し、外部への発信で示すことも、推進に重要だと示唆されています。有用性の発信は、通知にて挙げられた「意識」「知識・技能」「余力」の3つの観点に加えて、外来がん化学療法の調査で示された点です。

一方で、いずれの施設においても治療アウトカムおよび医療安全の向上を評価する指標の設定が難しいとの声が挙がっています。

医師が今後期待する業務として主に挙がったのは、現在行っている診察前面談の拡大と、処方および検査の代行オーダーです。多くの医師は、医師と薬剤師の間で事前の取り決めがなされれば実現できるのではないかとの意見でした。

※1 出典:厚生労働省「令和4年度タスク・シフト/シェア推進事業 病院薬剤師の勤務実態調査報告書」(2026年9月1日閲覧)
※2 出典:厚生労働省「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(2026年9月1日閲覧)
※3 出典:厚生労働行政推進調査事業費補助金「病院薬剤師へのタスク・シフト/シェア普及に対する阻害要因の把握とその解決に向けた調査研究」(2026年9月1日閲覧)
※4 出典:厚生労働省「病院薬剤師タスクシェアおよび確保・定着/離職防止に係る調査報告書」(2026年9月1日閲覧)
※5 出典:厚生労働省「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」(2026年9月1日閲覧)

新しく担う業務の知識と技能をどう備えるか

新しい業務に必要な知識・技能は、医療機関が整える研修で習得できます※1。令和3年の通知では、進めるうえでの留意点を「意識」「知識・技能」「余力」の3つに整理しています。

外来がん化学療法を対象とした調査研究でも、業務を担う薬剤師の知識への不安が課題に挙がりました。同じ不安は、医師へのインタビューでも語られています。

通知では研修で知識と技能を習得することを求めている

通知では、医療機関に各医療関係職種が新たに担当する業務に必要な知識・技能を習得するための教育・研修の実施が求められています。座学のみではなく、シミュレーター等による実技の研修も行う必要があります。

指導方法や研修のあり方の統一、マニュアルの作成にも取り組み、医療安全を十分に確保できるようにすることも求められています。

処方支援を進めるには多職種の理解と連携が重要

処方支援を進めるには、診療科をはじめとする多職種の理解と連携が重要です。

薬剤師が新たな業務を担うには、業務内容や役割分担について院内で認識を共有し、日ごろから信頼関係を築いておく必要があります。

そのため、診療科との対話を重ねるほか、学会のガイドライン等を題材とした勉強会を行うことも有効です。

また、薬剤部門の活動を病棟薬剤業務日誌や薬剤管理指導日誌に記録し、実績や成果をデータで院内に示していくことも重要です。

認定や専門資格の取得も研鑽の1つとされる

病院長を中心とした経営幹部の理解や、医局・看護部との理解や信頼関係を得るまでには、時間がかかります。

その根底に求められるのが、日ごろからの多職種との対話、チーム医療への貢献、認定や専門資格の取得などのたゆみない研鑽です。

推進には、薬剤部内における研修制度の工夫と自己研鑽も必要とされています。

患者に説明を行う業務で求められるのは、専門性に加えてコミュニケーション能力です。外来がん治療の認定・専門薬剤師の取得と、病棟での薬剤管理指導業務の経験を経て薬剤師外来へ配置するなど、人材育成やキャリアパスとあわせた設計が、医療機関には求められます。

認定・専門資格の取得を検討している方は、がん領域の認定薬剤師について役割や認定要件、申請までの流れをまとめたこちらの記事もご覧ください。

※1 出典:厚生労働省「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」(2026年9月1日閲覧)
※2 出典:厚生労働省「病院薬剤師タスクシェアおよび確保・定着/離職防止に係る調査報告書」(2026年9月1日閲覧)

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薬局薬剤師が医師の負担軽減に関われる場面

薬局薬剤師が担う業務は、令和3年の通知には定められていません。

一方で、病院と保険薬局が連携した取り組みは、個別の医療機関の事例として報告されています※1

いずれも、病院側が取り決めを整えた事例です。

一包化や粉砕を疑義照会なしで行う場面

京都大学医学部附属病院(1,141床・薬剤師84人)は2013年10月に、疑義照会簡素化プロトコルの運用を開始しました※1。一包化や粉砕の可否など、調剤上の形式的な変更に関する問い合わせが多く含まれていたためです。

病院長と保険薬局の代表者との間で合意書を交わしています。保険薬局の薬剤師が処方内容の変更を行った際は、処方せんに変更内容を明記して薬剤部へFAX送信する取り決めです。

同院のプロトコールに基づく処方変更は、2014年12月から2015年6月で月79±25件でした。2015年3月の院外処方せんに対する疑義照会は543件で、疑義照会による変更のうちプロトコールに該当する内容は14%(76件)です。最も多いのは一包化でした。

同院は、合意書の締結の際に薬局薬剤師へ直接説明を行っています。疑義照会を不要としている内容を正しく理解してもらうためです。それでも合意内容を逸脱した返信があり、保険薬局へ疑義照会を依頼する連絡も度々あります。

院外処方箋の問い合わせを病院へ送る場面

医療法人弘仁会 板倉病院(91床・薬剤師7人)は2019年4月から、保険薬局からの院外処方箋に対する問い合わせに病院薬剤師が一次対応しています※1。医師と事前に取り決めたプロトコールに従う運用です。

保険薬局は所定の様式に照会事項を記載し、薬剤部へFAX送信します。疑義照会に該当しない内容は、プロトコールに沿って病院薬剤師から回答が返ります。

保険薬局からの問い合わせ件数は、当初の月100件程度から取り組み開始後は50件程度に減りました。事例の報告様式では、医師の負担を「減った」、薬剤師の負担を「増えた」と回答しています。

同院は、保険薬局等で取り扱いがない薬剤の情報を適宜把握して院内の医薬品マスタ情報を修正し、次回以降に代替薬が処方されるようにしています。地域の保険薬局の薬剤師等との情報交換の場は、年二回の研修会です。

院内の医師や地域の薬剤師との信頼関係が構築されており、問合せや情報交換がより円滑にできるようになったとされています。

服薬情報をトレーシングレポートで届ける場面

東北大学病院(1,160床・薬剤師88人)は2019年12月に、院外処方箋の問い合わせを簡素化するプロトコールを導入しました※1。病院と保険薬局が事前に合意したうえで、問い合わせを省略できる事項と、変更後にトレーシングレポートで報告する事項をあらかじめ定めています。

これにより、医師への問い合わせを減らすとともに、病院への報告が不要な事項については、保険薬局からの報告も省略できるようになりました。

2020年1月以降、1か月あたりのトレーシングレポートは従来の40件程度から200件程度に増加しました。2020年2月の報告195件のうち、PBPMに関連する情報提供は156件で、残薬調整に関連する報告が52件と最も多くを占めました。

こうした内容は、本来であれば電話で医師への問い合わせが必要となるものですが、PBPMにより問い合わせが省略され、医師の負担軽減につながったと報告されています。

レポートに記載する内容や疑義照会との使い分けについては、下記もご参考ください。

吸入指導と点眼指導を病院と分担する場面

京都大学医学部附属病院は2013年12月から、吸入指導外来を運用しています※1。医師が吸入指導依頼せんを作成して薬剤師へ依頼するのは、新規デバイスの導入時と吸入手技が不良のときです。

医師の診察後に、病院薬剤師が吸入の意義教育と練習用器具を用いた吸入指導を行います。病院薬剤師が作成するのは、吸入薬説明手順・評価項目表です。患者を介して保険薬局へ情報提供されます。

保険薬局の薬剤師は薬剤交付時に実薬で吸入指導を行い、その内容を同じ表に記載して病院へFAX送信します。

吸入指導外来開始後の医師アンケートでは、アドヒアランスの向上や治療効果の判定が容易になったことなどが評価されています。

神戸アイセンター病院(30床・薬剤師4人)は2019年11月から、緑内障薬剤師外来を運用しています。薬剤師による点眼指導の内容やアドヒアランスを、施設間薬剤情報提供書で共有する体制です。

保険薬局の薬剤師による点眼指導や点眼補助ツールの紹介、患者の点眼手技にあった先発・後発医薬品の紹介ができるようになりました。医師の診察時の指導時間を減らすなど、診療時の負担軽減にも繋がっています。

※1 出典:日本病院薬剤師会「タスク・シフト/シェアに関連する取り組み事例」(2026年9月1日閲覧)

タスク・シフト/シェアのよくある質問

タスク・シフト/シェアを担うために資格は必要ですか

令和3年の通知では、薬剤師がタスク・シフト/シェアを担うために、新たな資格を取得することは要件とされていません。

一方で、医療機関には、新たに担当する業務に必要な知識・技能を習得するための教育・研修を実施することが求められています。

また、業務によっては、医師・薬剤師等による事前の取り決めや医師との協働が必要です。たとえば、プロトコールに基づいて投与量や投与期間を変更する場合には、あらかじめ対応手順を定めておく必要があります。病状が不安定で専門的な管理が必要な場合には、医師との協働が求められます。

タスク・シフト/シェアで薬剤師の負担は増えますか

業務内容や施設の体制によっては、薬剤師の負担が増える場合があります。

日本病院薬剤師会の事例では、タスク・シフト/シェアによって医師の負担は「減った」、薬剤師の負担は「増えた」と回答している事例もあります※1。一方、この回答からは負担がどの程度増えたのかまでは分かりません。

また、東北大学病院では、トレーシングレポートの確認と電子カルテへの登録に、薬剤師が週3時間、事務員が週5時間を要したと報告されています。

タスク・シフト/シェアを進める際は、医師の負担軽減だけでなく、業務を担う薬剤師の人員配置や業務量も含めて体制を整えることが重要です。


※1 出典:日本病院薬剤師会「タスク・シフト/シェアに関連する取り組み事例」(2026年9月1日閲覧)

タスク・シフト/シェアの取り決めを確かめるために

医師から薬剤師へ移せる業務の具体例は、令和3年の通知に6つ示されています。ただし、これらがすべてではなく、実際にどの業務をどこまで担うかは、医療機関の体制や医師・薬剤師間の取り決めによって異なります。実技指導については、薬剤師が患者に対して注射等の直接侵襲を伴う行為を行うことはできないと明記されています。

タスク・シフト/シェアを進めるうえでは、単に業務を移すのではなく、薬剤師が専門性を発揮できる体制を整え、医療安全を確保しながら多職種で役割を共有することが重要です。

病院に勤務している場合は、担いたい業務について院内の手順やプロトコールが整備されているかを確認しましょう。薬局に勤務している場合は、連携先の病院で疑義照会簡素化プロトコールや問い合わせの一次対応など、保険薬局と連携する仕組みが設けられているかを確認してみてください。

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