コラム

残薬問題とは?薬剤師が押さえるべき原因・リスクと2026年度改定を踏まえた実践対策

2026年度の調剤報酬改定では、残薬対策に関わる加算体系が大きく見直されました。従来の「重複投薬・相互作用等防止加算」は廃止され、残薬調整に特化した「調剤時残薬調整加算」が新設されています。かかりつけ薬剤師による残薬調整には最大50点の評価がつき、薬剤師の能動的な介入が、制度上も明確に求められる時代になったといえるでしょう。

本記事では、残薬の基本的な定義から社会的背景、発生原因、リスク、そして現場で実践できる対策までを解説します。

残薬の定義と具体例

残薬とは、処方・調剤されたにもかかわらず服用されずに患者の自宅等に保管されている薬のことです。明確な法律上の定義はないものの、医療現場では「飲み忘れや飲み残し、自己判断による中止などで手元に余っている薬」を広く残薬と呼んでいます。

飲み忘れが積み重なるケースや、処方変更後に旧処方の薬がそのまま残るケース、症状が改善したと感じて自己判断で中止するケースなどが代表的です。使用期限を過ぎた薬や開封後に品質が劣化した薬が、冷蔵庫や引き出しの中で大量に見つかることも珍しくありません。

なぜ今、残薬問題に注目すべきなのか

残薬問題は以前から指摘されてきましたが、今まさに注目度が高まっている背景には大きく2つの要因があります。

ひとつは超高齢社会が進み多剤併用の患者が増加し、残薬が発生しやすい構造そのものが拡大していることです。

もうひとつは、2026年度調剤報酬改定で残薬対策に特化した加算が新設され、薬剤師による能動的な介入が制度面からも強く後押しされるようになった点です。

2026年度改定における残薬対策の強化

今回の改定では、従来の「重複投薬・相互作用等防止加算」が廃止され、残薬調整と有害事象防止の2つに機能が分離されました。

残薬対策に関わる主な加算の変更点は以下のとおりです。

項目改定内容点数
調剤時残薬調整加算(新設)残薬確認後、処方医への照会により7日分以上の日数変更がなされた場合に算定(6日分以下でも理由記載により算定可)イ:50点(在宅患者等で処方箋交付前の提案が反映)/ロ:50点(在宅患者等)/ハ:50点(かかりつけ薬剤師)/ニ:30点(上記以外)
薬学的有害事象等防止加算(新設)残薬以外の重複投薬・相互作用等の照会により処方変更された場合に算定イ:50点(在宅患者等で処方箋交付前の提案が反映)/ロ:50点(在宅患者等)/ハ:50点(かかりつけ薬剤師)/ニ:30点(上記以外)
かかりつけ薬剤師訪問加算(新設)かかりつけ薬剤師が患者宅を訪問し、残薬整理・服用薬の管理方法の指導等を実施し、医療機関に情報提供した場合に算定(6月に1回)230点

従来の加算は最大40点だったため、残薬対策への評価が引き上げられた形です。

特にかかりつけ薬剤師であれば残薬調整だけでも50点を算定でき、訪問加算と組み合わせることで対人業務の実績を積み上げやすい設計になっています。

残薬が社会問題となっている理由と背景

75歳以上の後期高齢者の薬剤費から推計された残薬は年間約475億円にのぼるとの報告があります。また、厚生労働科学研究の推計では、残薬による薬剤費の損失は年間数千億円規模に達する可能性があるとの報告もあります。

国民医療費が年間45兆円を超えるなかで、服用されない薬への支出は医療保険財政を圧迫する要因です。高齢化の進展とともに残薬問題はさらに深刻化するとみられています。

医薬品の供給不安が続く現在では、残薬として眠っている薬が供給不足の一因になっているとの指摘もあり、限られた医薬品資源の有効活用という観点からも対策の重要性が高まっています。

残薬が発生する主な原因

残薬が生じる原因は患者側と医療提供側の双方にあり、複合的に作用するケースが多くみられます。

患者側で最も多いのは飲み忘れです。服用回数や錠数が多いほど飲み忘れが増え、特に認知機能の低下した高齢者では管理が困難になります。副作用への不安や薬の必要性が理解できていないことから、自己判断で中止するケースも少なくありません。錠剤が大きくて飲みにくい、一包化されていないため管理しづらいといった剤形の問題もあります。

医療提供側では、複数の医療機関から処方が出ており、重複やDo処方の見直しが行われないまま漫然と継続されることがあります。受診日と処方日数のずれにより余剰が蓄積するパターンも頻繁にみられるでしょう。

処方時・調剤時に残薬の有無を確認する仕組みが十分に機能していないことも原因のひとつであり、薬剤師が来局間隔や処方内容を能動的にチェックすることで初めて発見・介入できます。

残薬がもたらすリスクと問題点

残薬の問題は医療費の無駄にとどまらず、患者の健康と安全に直結します。

薬が服用されなければ治療効果は得られず、症状のコントロールが不十分になる可能性があります。効果が出ないことで医師がさらに薬を追加する「処方カスケード」に陥るリスクもあるでしょう。

使用期限を過ぎた薬や保管状態の悪い薬を誤って服用すれば、期待した効果が得られないばかりか健康被害を招くおそれがあります。また、患者自身の窓口負担の増加や、介護者にとっての管理負担も見過ごせない問題です。

薬剤師による残薬確認の実践方法

残薬の確認は、日常業務のなかで段階的に実践できます。処方箋受付時や薬をお渡しする際に「お手元にお薬が余っていませんか」と一言声をかけることが出発点です。

お薬手帳の処方履歴を確認しながら、前回処方の日数と来局間隔に乖離がないかを確認しましょう。

患者が残薬を申告しやすい雰囲気づくりも重要で、「余っていたら遠慮なくお持ちください」と繰り返し伝えることが効果的です。服薬フォローアップの電話やメッセージで服用状況を確認することは、残薬の早期発見にもつながります。

在宅訪問時には、薬の保管場所を実際に確認し、使用期限や保管状態もチェックしましょう。発見した残薬があれば、処方医へ調整を提案します。提案と結果を薬歴に記録しておくことは、調剤時残薬調整加算の算定根拠としても不可欠です。

まとめ:残薬対応がもたらす薬剤師の価値

残薬への積極的な介入は、単なるコスト削減にとどまらない薬剤師の存在価値を示す機会です。

2026年度改定で調剤時残薬調整加算が独立した加算として新設されたことは、残薬対応を薬剤師固有の専門業務として評価する国の姿勢の表れといえます。残薬を確認・調整する過程では、患者の服薬状況や生活背景を深く把握できるため、アドヒアランスの改善提案や処方適正化への発展が期待できます。

かかりつけ薬剤師として継続的に関わることで患者との信頼関係が強まり、フォローアップ加算や訪問加算の算定にもつながるでしょう。

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