コラム

ポリファーマシーとは?2026年度改定で変わる薬剤師の役割と実践的な対策を解説

2026年度の診療報酬改定では、ポリファーマシー対策に関わる加算が大きく再編され、重複投薬・相互作用等防止加算の廃止と新加算の新設が行われました。あわせて、服用薬剤調整支援料2も大幅に点数が引き上げられ、薬剤師による薬学的介入への評価が一段と強化されています。

「対物から対人へ」の流れが加速するなか、ポリファーマシーへの対応力は今まさに薬剤師に問われるスキルといえるでしょう。

本記事では、ポリファーマシーの基本的な定義から改定の注目ポイント、そして現場で実践できる具体的な対策までを整理しました。日常業務にぜひお役立てください。

ポリファーマシーの定義と高齢社会で問題になる理由

ポリファーマシーとは、多種類の薬の服用に関連して薬物有害事象のリスク増加やアドヒアランスの低下が生じている状態を指します。単に薬の数が多いことではなく、それに伴って実際に問題が起きていることが本質です。

何剤から該当するか

厳密な基準はないものの、5種類以上で転倒リスクが上昇し、6種類以上で有害事象が増加するとの報告があります。75歳以上では約4割が5種類以上を処方されており、加齢による肝・腎機能低下と慢性疾患の重複が問題を深刻化させています。複数の医療機関を受診する高齢者では処方全体が把握されにくく、意図せず多剤併用に陥るケースも少なくありません。

2026年度調剤報酬改定で何が変わったか

今回の改定では、ポリファーマシー関連の加算体系が大きく再編されました。薬剤師の薬学的介入を、「確認した」ではなく「有害事象を防いだ」というアウトカムで評価する方向が明確になっています。

重複投薬・相互作用等防止加算の廃止と新設

従来の「重複投薬・相互作用等防止加算」は廃止され、「調剤時残薬調整加算」と「薬学的有害事象等防止加算」の2つに再編されました。薬学的有害事象等防止加算では、処方箋交付前の提案や在宅患者への介入、かかりつけ薬剤師による対応といった区分が設けられ、介入の質に応じた評価がなされます。

服用薬剤調整支援料2の大幅引き上げ

服用薬剤調整支援料2は、従来の最大110点から1,000点へと大幅に引き上げられました。算定にはかかりつけ薬剤師であることに加え、ポリファーマシー対策に関する研修の受講が要件とされています。単なる残薬調整ではなく、薬学的管理に基づく薬物療法の適正化を評価する姿勢が明確に示されました。

施設間の薬剤情報連携の強化

病院側では、退院・転院時にポリファーマシー対策が途切れないよう「薬剤総合評価調整加算」の要件が見直され、施設間の薬剤情報連携が評価の軸に据えられています。薬局薬剤師にとっても、入院前後の情報を途切れさせない連携体制の構築が求められるでしょう。

ポリファーマシーが引き起こすリスク

ポリファーマシーの影響は患者の健康と生活の質に直結します。薬の種類が増えるほど、以下のようなリスクが高まります。

  • 薬物相互作用や副作用の確率が高まり、ふらつき・転倒、低血糖、肝機能障害、電解質異常などが起きやすくなる
  • 服用回数や錠数の増加は飲み忘れにつながり、認知機能が低下した高齢者ではアドヒアランスの維持が困難
  • 副作用を新たな症状と判断して別の薬が追加される「処方カスケード」を引き起こす可能性がある
  • 医療費の増大や、患者・介護者双方の負担増にもつながる

このように、ポリファーマシーは身体面・生活面・経済面のいずれにも影響を及ぼします。多剤併用そのものが悪いのではなく、それに伴う有害事象やアドヒアランスの低下を見逃さないことが重要です。

薬剤師がチェックすべきポリファーマシーのサイン

処方面では、同効薬の重複や漫然処方の有無を確認することが基本です。複数医療機関から処方がある患者では、配合剤成分を含めた重複チェックが欠かせません。

病態が安定しているにもかかわらず長期間変更のない処方にも注意が必要です。患者の様子からは、残薬の多さやふらつき、食欲低下、日中の過度な眠気が手がかりになります。「最近よく転ぶようになった」「食欲がない」といった何気ない訴えが、薬物有害事象発見の糸口になることもあるでしょう。

減薬の進め方と医師への提案

OTC医薬品やサプリメントも含めた全体の服薬状況を把握し、各薬剤の処方目的と現在の病態を照らし合わせることから始めましょう。

有害事象リスクの高い薬やベネフィットの得にくい薬から見直し、中止・減量は1剤ずつ段階的に進めるのが原則です。急な中止は離脱症状や病態悪化を招く可能性があるため、慎重に経過を観察しましょう。

医師への提案では、検査値や患者の主訴など客観的データを根拠にすると受け入れられやすくなります。文書での提案は服用薬剤調整支援料の算定にも直結するため、提案内容と経緯を薬歴に記録しておきましょう。提案が採用されなかった場合でも記録を残しておけば、将来の再提案に活かすことができます。

服薬指導で押さえるべきポイント

薬の目的と必要性を分かりやすく伝え、「飲み残しはありませんか」「体調で気になることはありませんか」と積極的に声をかけることが基本です。お薬手帳の活用を促し、OTC医薬品やサプリメントの情報も含めた一元管理を働きかけましょう。自己判断で薬を中止することのリスクについても丁寧に伝え、相談しやすい関係を築くことが対策の土台になります。

まとめ:これからの薬剤師に求められるポリファーマシー対応力

2026年度改定は、ポリファーマシー対策における薬剤師の役割を大きく引き上げるものです。服用薬剤調整支援料2の1,000点への引き上げは、薬学的介入の価値を正面から評価する姿勢の表れといえます。

この流れに対応するには、処方の薬学的評価だけでなく、患者の生活背景やADL、認知機能まで踏まえた包括的なアセスメント力が不可欠です。多職種連携の実践と、公的指針やガイドラインに基づく知識のアップデートを継続しましょう。ポリファーマシーへの積極的な取り組みは、患者の安全を守り、チーム医療のなかで薬剤師の存在価値を高めることにつながります。

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