抗精神病薬の種類と作用機序|薬剤師が押さえておきたい薬理学的特徴と服薬指導のポイント
2025.12.26

抗精神病薬は、統合失調症をはじめとする精神疾患の治療において中核を担う薬剤です。現在は、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬に大別され、作用機序や副作用プロファイルが異なります。薬剤師には、薬理学的特徴を踏まえた服薬指導や副作用モニタリングが求められるでしょう。
この記事では、抗精神病薬の主な種類と作用機序について、薬剤師が現場で活用できる視点を交えて解説します。
目次
抗精神病薬とはどのような薬剤か
抗精神病薬は、主に幻覚や妄想などの精神病症状を改善する目的で使用される薬剤です。統合失調症治療の第一選択として位置づけられており、症状の改善だけでなく再発予防においても重要な役割を果たしています。双極性障害の躁状態やせん妄、重度の行動障害などに用いられることもあり、精神科領域で幅広く処方される薬剤といえるでしょう。
長期服用が前提となるケースが多いため、薬剤師による継続的な服薬支援が欠かせません。
抗精神病薬の大きな分類
抗精神病薬は作用機序や副作用特性により、定型抗精神病薬(第一世代)と非定型抗精神病薬(第二世代)の2つに分類されます。
それぞれの特徴は、以下の表のとおりです。
| 分類 | 主な特徴 |
| 定型抗精神病薬(第一世代) | 強いD2遮断作用、錐体外路症状が出やすい |
| 非定型抗精神病薬 (第二世代) | D2遮断+セロトニン遮断、代謝系副作用に注意が必要 |
近年は、非定型抗精神病薬が処方の中心となっており、新規処方の多くを占めています。
抗精神病薬に共通する基本的な作用機序
抗精神病薬の主たる作用機序は、ドパミンD2受容体の遮断です。中脳辺縁系におけるドパミン活性を抑制することで、幻覚や妄想といった陽性症状の改善が期待できます。しかし、ドパミン神経系は脳内の複数の経路に存在するため、治療効果以外の経路への影響が副作用として現れることがあります。
ドパミン経路と副作用の関係
脳内のドパミン神経系は4つの主要な経路に分けられ、それぞれが異なる機能を担っています。抗精神病薬はこれらの経路に非選択的に作用するため、治療効果と副作用が経路ごとに現れます。
| 経路 | 関連する作用・副作用 |
| 中脳辺縁系 | 陽性症状(幻覚・妄想)の改善(治療効果) |
| 中脳皮質系 | 陰性症状・認知機能の悪化 |
| 黒質線条体系 | 錐体外路症状(パーキンソニズム、ジストニアなど) |
| 漏斗下垂体系 | 高プロラクチン血症(乳汁分泌、月経異常など) |
この経路別の理解は、副作用発現の予測や患者説明に役立つでしょう。
定型抗精神病薬の作用機序と特徴
定型抗精神病薬は、強力なドパミンD2受容体遮断作用を持つ薬剤群です。ハロペリドールやクロルプロマジンなどが代表的な薬剤として挙げられます。陽性症状に対する効果は高い一方、錐体外路症状や高プロラクチン血症といった副作用が生じやすいことが特徴です。
定型抗精神病薬の主な副作用
錐体外路症状としては、パーキンソニズム、アカシジア、急性ジストニア、遅発性ジスキネジアなどがあります。 高プロラクチン血症では、乳汁分泌、月経異常、性機能障害などが問題となることがあるでしょう。 現在は、非定型抗精神病薬の登場により使用頻度が減少していますが、急性期の鎮静目的や特定の症例では選択されることがあります。
非定型抗精神病薬の作用機序と特徴
非定型抗精神病薬は、ドパミンD2受容体遮断に加えてセロトニン5-HT2A受容体遮断作用を持つ点が特徴です。この作用により、錐体外路症状が比較的生じにくく、陰性症状や認知機能への効果も期待されています。
主な非定型抗精神病薬と特徴
非定型抗精神病薬は複数の薬剤が臨床で使用されており、それぞれ受容体親和性や副作用プロファイルが異なります。
代表的な薬剤の特徴は、以下の表のとおりです。
| 薬剤名 | 主な特徴 |
| リスペリドン | D2遮断作用が比較的強い、高プロラクチン血症に注意が必要 |
| オランザピン | 鎮静作用あり、体重増加・代謝系副作用に注意が必要 |
| クエチアピン | 鎮静作用が強い、糖尿病には禁忌である |
| アリピプラゾール | ドパミン部分作動薬、代謝系副作用が少ない |
| ブレクスピプラゾール | ドパミン部分作動薬、アカシジアが少ない |
薬剤ごとに受容体親和性が異なるため、患者の症状や副作用リスクに応じた選択が行われます。
非定型抗精神病薬の副作用プロファイル
非定型抗精神病薬では、錐体外路症状のリスクは軽減される一方、代謝系副作用への注意が必要です。体重増加、脂質異常、耐糖能異常は長期服用において問題となりやすく、定期的なモニタリングが推奨されています。
副作用モニタリングの実際
薬剤師は体重変化や食生活の聞き取りを通じて、代謝系副作用の早期発見に貢献できます。鎮静作用による日中の眠気や起立性低血圧についても、患者からの訴えを注意深く確認することが大切です。副作用の程度によっては処方変更が検討されるため、気になる症状があれば医師への情報提供を行いましょう。
持効性注射剤(LAI)の位置づけ
持効性注射剤(LAI:Long-Acting Injectable)は、内服アドヒアランス不良への対応として使用される剤形です。数週間に1回の投与で血中濃度を安定させることができ、服薬の負担軽減と再発予防に有用とされています。
LAIの主な薬剤と投与間隔
現在、国内で使用可能なLAIには複数の製剤があり、投与間隔は薬剤によって異なります。
主な薬剤と投与間隔を以下に示します。
| 薬剤名 | 投与間隔 |
| リスペリドン持効性懸濁注射液 | 2週間ごと |
| パリペリドンパルミチン酸エステル | 4週間ごと/3か月ごと |
| アリピプラゾール持効性水懸筋注用 | 4週間ごと |
薬剤師はLAIと内服薬の違いや、導入時の切り替え方法について理解しておく必要があるでしょう。
抗精神病薬使用時に薬剤師が注意すべきポイント
抗精神病薬の服薬指導では、いくつかの重要な注意点があります。効果発現までに数週間を要することや、自己中断による再発リスクについて患者に説明することが大切です。副作用の早期発見と医師への情報提供も薬剤師の重要な役割といえるでしょう。CYP3A4やCYP2D6を介した相互作用にも注意が必要であり、併用薬の確認は欠かせません。
まとめ
抗精神病薬はドパミン系を中心に作用する薬剤であり、定型・非定型それぞれに特徴と注意点があります。副作用管理と服薬継続支援は薬剤師の重要な役割であり、作用機序の理解がその基盤となるでしょう。薬理学的な知識を日常の服薬指導や患者対応に活かし、治療継続を支える専門職としての役割を果たしていきましょう。
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