健康サポート薬局とは?|届出要件や研修、メリットなどをわかりやすく解説
2026.07.09

「会社から健康サポート薬局を目指す方針が出たものの、自分の店舗に何が足りないのかわからない」「誰がどの研修を受ければいいのか」とお悩みの管理薬剤師の方も多いのではないでしょうか。また、届出のハードルが想像以上に高いのではという不安もあるかもしれません。
この記事では、健康サポート薬局制度の概要や届出要件、実際の手続きの流れ、そして薬局が得られるメリットを実務目線でわかりやすく解説します。
この記事を読むと、健康サポート薬局制度について理解でき、自分がどう動けばよいのかがわかります。
目次
健康サポート薬局とは
患者が医薬分業の本当のメリットを感じるには、日頃から薬や健康について気軽に相談できる「かかりつけ薬剤師」の存在が不可欠です。こうした信頼関係は、薬剤師と患者と継続的に関わることで育まれます。
かかりつけ薬剤師が役割を最大限に発揮できるよう、薬局には適切な業務管理や構造設備の確保、品質管理の徹底が求められています。こういった背景から、国は地域住民の健康を支える新たな拠点として一定の基準を設けるに至りました。
処方箋を持たない地域住民であっても、未病の段階から市販薬や健康食品、食事、介護などの悩みを気軽に相談できる、セルフメディケーションの身近な推進拠点としての役割が強く期待されています。
定義とかかりつけ薬局との違い
薬事関係法令において健康サポート薬局とは、「かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、国民の自発的な健康の保持増進を支援する(健康サポート)機能を備えた薬局」と定義されています。
平成28年にスタートした本制度は、令和8年3月末時点で全国3,592店舗になっています。つまり、従来のかかりつけ薬局の基本機能の上に、地域住民の健康増進支援というプラスアルファの機能を備えた薬局を健康サポート薬局と呼んでいるといっていいでしょう。
認定制ではなく届出制
健康サポート薬局は、現行制度において届出制となっています。国が定める基準を満たした上で、都道府県知事などへ届出を行うことで、初めて「健康サポート薬局」として表示・公表できる仕組みです。
名乗る以上は基準への適合状態を維持することが薬局開設者の遵守事項とされており、要件を満たさなくなった場合には速やかに変更届を提出する必要があります。
出典:健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会|健康サポート薬局のあり方について
出典:日本薬剤師会|健康サポート薬局について
出典:厚生労働省|健康サポート薬局の届出件数(令和8年3月31日時点)
健康サポート薬局の届出要件
健康サポート薬局として届出をするには、大きく分けて8つの要件をクリアする必要があります。また、要件を満たした上で、届出時には多数の添付書類を準備・提出しなければなりません。
ここでは、全体像を把握しやすいよう8つの要件を5つのグループに分けて解説します。なお、要件の1つである「研修」については次章で詳しく掘り下げます。
多数の要件と添付書類に圧倒されるかもしれませんが、チェックリストなどを用いて自店舗の現状を把握し、不足分を計画的に補っていくことがスムーズな届出への第一歩です。
かかりつけ機能と地域連携の体制整備
【要件1】かかりつけ薬局としての基本機能
服薬情報の一元的・継続的な把握と薬歴への記載、丁寧な服薬指導や副作用のフォローアップ、お薬手帳の積極的な活用、24時間対応および在宅対応の体制整備が必要です。
【要件2】地域における連携体制の構築
必要に応じた医療機関への受診勧奨や連携機関への紹介を行うとともに、スムーズな案内ができるよう地域の連携体制リストを作成しておくことが求められます。
薬剤師の常駐要件(実務経験と研修)
【要件3】5年以上の実務経験と研修修了を満たす薬剤師の常駐
所定の研修を修了し、かつ5年以上の実務経験を持つ薬剤師が常駐している必要があります。また、この研修修了薬剤師には、資格取得後も、認定や各種研修を積極的に受講するなど、健康サポートに関する知識やスキルの自己研鑽に継続して努める姿勢が必要です。研修制度の詳細については、次のセクションで解説します。
設備・表示の基準
【要件4】設備(個人情報に配慮した窓口)
利用者が気兼ねなく相談できるよう、パーテーションで区切るなど個人情報に配慮した相談窓口の設置が必要です。届出時には確認用の写真添付が求められます。
【要件5】表示(薬局内外の表示)
薬局の外側の見えやすい場所に、「健康サポート薬局」であることや、健康相談を積極的に受け付けている旨を掲示します。「厚生労働省基準適合」の文言を併記することも可能です。
備蓄と開局時間のルール
【要件6】48薬効群のOTC等・衛生材料・介護用品の備蓄
地域のニーズに応えるため、指定された48薬効群のOTC医薬品や衛生材料等の備蓄が必要です。
【要件7】開局時間
平日は午前8時から午後7時までの時間帯に「8時間以上」開局していることが望ましいとされています。また、地域の実情に応じつつ、平日は連続して開局し、土日のいずれかは「4時間以上」開局することが要件となっています。
健康相談・サポートの取組実績
【要件8】健康サポートの取組(健康相談記録などの体制)
単に体制を整えるだけでなく、実際の取組実績も必要です。健康の保持増進に関する相談対応とその記録の作成、地域住民に向けた具体的な健康相談会などの実施、さらにはそれらの取組をポスターなどで地域へ周知している実績が届出時に問われます。
出典:厚生労働省医薬・生活衛生局長|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について
健康サポート薬局研修とは
健康サポート薬局研修は複数の団体が実施していますが、合計30時間の全課程を同一の実施団体で受講しなければ修了証は発行されません。
ここでは、代表的な日本薬剤師会・日本薬剤師研修センターが実施する研修を例に解説します。
研修の構成(知識習得型・技能習得型)と有効期限
研修は、計30時間(知識22時間+技能8時間)の学習プログラムで構成されています。日本薬剤師会の場合、以下のような内訳となります。
【健康サポート薬局研修】
| 種類 | 内容 | 時間 | 実施機関 | 費用(税込) |
| 技能習得型研修(研修会A) | 健康サポートのための多職種連携研修 | 4時間 | 都道府県薬剤師会 | 都道府県薬剤師会による |
| 技能習得型研修(研修会B) | 健康サポートのための薬剤師の対応研修 | 4時間 | 都道府県薬剤師会 | 都道府県薬剤師会による |
| 知識習得型研修 | e-ラーニング | 22時間 | 日本薬剤師会(専用サイト) | 8,800円 |
技能習得型の「研修会A」は、勤務先薬局がある都道府県薬剤師会の研修を受講します。もし勤務先が他県へ変わった場合は、研修修了証を持っていても、異動先の都道府県で研修会Aを再受講する必要があります。
各研修を終えると受講証明書が発行されます。受講証明書の有効期限は3年間です。有効期限内に日本薬剤師研修センターへ発行申請(費用5,500円)することで「研修修了証」が交付されます。有効期限は発行日から6年間で、更新が必要です。
修了証発行要件と受講者選定のポイント
研修修了証は、以下の両方に該当する場合のみ発行されます。
- すべての技能習得型研修および知識習得型研修を修了した者
- 薬局において、薬剤師として5年以上の実務経験がある者
実務経験は、週の勤務時間数が20時間以上であった期間を通算して計算します。
ここで管理薬剤師が悩みがちなのが、「研修は自分が受けるべきか、他のスタッフでもよいのか」という点です。制度上は、店舗に常駐する薬剤師のうち1名が修了要件を満たしていれば届出は可能です。しかし、その1名が異動や退職となった場合、基準を満たさなくなり変更届が必要になるリスクが生じます。そのため、店舗の規模にもよりますが、複数名で計画的に取得を進めるのが安心です。
また、実務経験が5年に満たないスタッフでも、実施機関によっては研修自体を受講することは可能です。その場合は修了証の代わりに「受講証明書」が発行され、後日実務経験5年を満たした段階で正式な「修了証」の発行申請をできます。計30時間の学習は決して少なくない負担となるため、スタッフにはe-ラーニングを先行して進めてもらうなど、店舗全体で役割分担を検討することをおすすめします。
【注意】研修認定薬剤師制度とは別の制度
混同されやすいポイントですが、「健康サポート薬局研修」と生涯学習を目的とした「研修認定薬剤師」の制度は全くの別物です。健康サポート薬局研修を受講しても研修認定薬剤師の単位にはならず、その逆もありません。計画を立てる際はそれぞれ分けて考える必要があります。
出典:日本薬剤師会|健康サポート薬局研修について〜研修受講から修了までの流れ〜
出典:日本保険薬局協会|研修受講時及び e-ラーニング終了時、実務歴 5 年未満の薬剤師の皆様へ
健康サポート薬局の届出の流れ
届出は、薬局開設者が主体となって以下の順序で進めます。
- 必要書類の準備と事前相談
- 管轄の保健所への届出
- 薬局機能情報の報告・公表
届出の基準自体は厚生労働省の告示に基づく全国共通のルールですが、提出書類の指定フォーマットや細かい運用ルールは各都道府県・保健所によって異なります。必ず自店舗を管轄する自治体のホームページで最新情報を確認し、本格的な準備に入る前に事前相談することを推奨します。
とくに、届出には各種マニュアルや図面、実績を証明する写真など大量の添付書類が求められます。不備による差し戻しを防ぐためにも、チェックリストを活用しながら準備を進めましょう。
健康サポート薬局になるメリット
要件を満たすために労力はかかりますが、健康サポート薬局になることで、薬局・薬剤師、そして地域住民の双方に大きなメリットをもたらします。具体的にどのような利点があるのかを説明します。
薬局・薬剤師のメリット
最も大きなメリットは、地域における競合薬局との明確な差別化です。「薬局機能情報提供サービス」での検索性も高まり、地域住民に選ばれやすくなります。また、健康食品やOTC医薬品に関する相談をきっかけとした新規来局者の増加も期待できます。
さらに、要件である「48薬効群のOTC備蓄」などは、地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設要件とも重なり、複数の加算や制度に同時対応しやすくなるというのもメリットです。
健康サポート薬局は、地域で患者を支える地域包括ケアの拠点という役割を果たし、経営基盤を強固にする効果があります。
処方箋を持たない地域住民との接点が増えることで、薬剤師としての職能を調剤業務以外でも存分に発揮できるようになります。病気になる前の未病の段階から住民の健康にかかわり、日頃から信頼関係を構築しておくことで、いざ病院にかかって処方箋をもらった際に「あそこの薬局に行こう」と選んでもらえる、好循環が生まれるのも大きな魅力です。
患者・地域住民のメリット
患者にとっては、処方箋がなくても自身の健康や生活習慣について気軽に相談できる窓口が増えることが大きなメリットです。専門性の高い薬剤師から確かな知識に基づくアドバイスを受けられ、必要に応じて適切な医療機関や行政窓口へスムーズに繋いでもらえる安心感があります。
出典:厚生労働省医薬・生活衛生局長|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について
出典:厚生労働省|令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】
健康サポート薬局は「健康増進支援薬局」へ
現在、健康サポート薬局として運用されている制度ですが、法改正により、さらに制度がアップデートされる予定です。将来的な方向性についても知っておきましょう。
2025年薬機法改正による名称と制度の変更
2025年の薬機法改正により、現在の「健康サポート薬局」から「健康増進支援薬局」へと名称と制度の移行が進められる流れとなりました。これにより、薬局が持つ特定の高い役割や機能が、患者や地域住民から見てよりわかりやすくなります。また、在宅対応など地域連携薬局が本来担うべき機能については、健康増進支援薬局の要件から外れるなど、基準の緩和・整理がなされる予定です。
これまでは地域連携薬局と要件が重複する部分もあり、店舗としてどちらを目指すべきか迷うケースもありました。しかし今後は、「在宅医療を支える地域連携薬局」と「未病予防・健康維持を支える健康増進支援薬局」という形で機能の住み分けがより明確になります。自店の強みや地域ニーズを見直すよいきっかけとなるでしょう。
届出制から認定制への移行
厚生労働省は、改正薬機法に伴う省令を2026年6月30日に公布しました。公布に伴い、2027年5月20日より、従来の「届出制」から都道府県知事による「認定制」へと枠組みが大きく変わります。今後はより公的な認定制度として位置づけられることになります。
出典:厚生労働省|地域連携薬局・健康増進支援薬局の認定基準設定に係る基本的考え方について(これまでの議論の整理)
出典:厚生労働省|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について
届出の土台となる「かかりつけ機能」を支えるために
健康サポート薬局へのステップアップを果たすには、基盤となる「かかりつけ薬剤師・薬局機能」を強固にすることが不可欠です。かかりつけ薬剤師指導料の施設基準を満たすためには、CPC(薬剤師認定制度認証機構)が認証する研修認定(例:研修認定薬剤師)の取得が求められます。この取得・更新を効率的に支える手段の一つとして「ためとこ」が活用できます。
健康サポート薬局の基盤は「かかりつけ薬剤師・薬局」
前述の通り、健康サポート薬局の届出要件の第一歩は「かかりつけ薬局としての基本機能を持つこと」です。「かかりつけ薬剤師指導料」を算定できる(施設基準を満たす)ためには、CPCが認証する研修認定薬剤師の資格が必須となります。つまり、認定薬剤師の育成・維持がスタートラインといえます。
研修認定薬剤師の取得・更新をスムーズにする「ためとこ」
日々の調剤業務や店舗管理で忙しい中、かかりつけ機能維持に必要な「研修認定薬剤師の単位取得」は負担になりがちです。その取得・更新を効率化する手段として役立つのが「ためとこ」です。スキマ時間で効率よく学習を進められるため、薬剤師の自己研鑽を無理なくサポートします。
ただし、注意点として「ためとこで健康サポート薬局の研修が受けられる」「ためとこの単位が健康サポート薬局の届出要件に使える」わけではありません。あくまで、施設基準のかかりつけ機能を支える(研修認定薬剤師を取得・維持する)ためのツールとして活用しましょう。
まとめ|自店舗の現状把握からはじめよう
健康サポート薬局の届出要件は多岐にわたり、書類準備などのハードルは確かにあるといっていいでしょう。しかし、一つひとつの要件を整理し、自店の現状と照らし合わせることで、何が足りないのかが見えてきます。
まず、自店舗の機能の棚卸しと管轄保健所への確認を通して、対象となる薬剤師の研修受講計画を立てることから始めてみましょう。