急性アルコール中毒の基礎知識と現場での対応ポイント
2026.02.02

急性アルコール中毒は、一過性の酩酊状態にとどまらず、意識障害や呼吸抑制、窒息など命に関わる危険な状態へと進行することがあります。近年では若年者を中心に救急搬送者数が増加しており、一気飲みなどによる事故や死亡例も後を絶ちません。薬剤師として、アルコールの影響やリスクを正しく理解し、周囲で起こり得る緊急事態に適切に対応できる知識は欠かせません。
本記事では、急性アルコール中毒の病態やなりやすい人の特徴、現状、そして現場で役立つ対処法についてわかりやすく解説します。
※本記事は、「健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~」(厚生労働省)を出典としています。
目次
急性アルコール中毒
急性アルコール中毒は「アルコール飲料の摂取により生体が精神的・身体的影響を受け、主として一過性に意識障害を生じるものであり、通常は酩酊と称されるものである」と定義されます。急性アルコール中毒になると、意識レベルが低下し、嘔吐、呼吸状態が悪化するなど危険な状態に陥ります。搬送者数は年々増えており、若年者・女性・高齢者などでリスクが高まり、とくに大学生や新社会人では一気飲みとして飲酒させられ、死亡に至るケースが毎年発生しています。急性アルコール中毒が疑われた場合、適切な処置や対応法を取りましょう。
急性アルコール中毒とは
人は、飲酒をすれば酩酊と呼ばれる酔った状態になります。通常、血中アルコール濃度が0.02%から0.1%程度でほろ酔いと呼ばれるリラックスした状態になりますが、0.3%を超えると泥酔期と呼ばれるもうろう状態、0.4%を超えると昏睡期という生命に危険を生じうる状態になります。
どの程度からが急性アルコール中毒となるのか明確な基準はありません。しかし、泥酔以上の状態では意識レベルが低下し、嘔吐・血圧低下・呼吸数の低下などが起こり、生命に危険をおよぼす可能性があります。
急性アルコール中毒により死亡する場合、血中アルコール濃度が高まることによって呼吸・循環中枢が抑制されて死に至る事例と、吐物による窒息で死亡する事例があります。また死亡には至らなくとも、足下のふらつきなどによって転倒する、電車や車にひかれる、海や川でおぼれる、もうろう状態で行った言動によってトラブルに巻き込まれるなど、さまざまな危険性が高まります。
急性アルコール中毒になりやすい人とは
一般に若年者・女性・高齢者・飲酒後に顔の赤くなるタイプの人(赤型体質)はアルコールの分解が遅いため、アルコールの血中濃度が下がりにくく、急性アルコール中毒のリスクが高まります。中でも若年者は自分の限界がわからないこと、アルコールに対してまだ耐性が低いことなどから、急性アルコール中毒のリスクが高いと考えられます。また大学生や新社会人では、新人歓迎行事として一気飲みと称される慣習がいまだ残っています。
急性アルコール中毒の現状
東京消防庁が発表した急性アルコール中毒による搬送者数の推移によれば、年々増加傾向にあり、毎年1万人以上の人が急性アルコール中毒によって救急搬送されています。令和元年(2019年)は1万8,000人以上と、過去5年で最多でした。また、年齢別で見ると20歳代の搬送者数が8,802人と最も多い人数でした。20歳代の若者が自発的に大量飲酒する傾向にあるとは考えにくく、大学生や社会人になったばかりで適量のわからない若者が、新人歓迎行事などでその場の雰囲気にのまれ、あるいは通過儀礼と称して、非自発的に先輩や同僚に飲酒させられていると考えられます。一気飲みによる死亡者は毎年一定数発生し続けています。
急性アルコール中毒の対処法
もし周囲に急性アルコール中毒が疑われる人がいる場合、まず次の救護方法を対応法として心がけましょう。
- 絶対に1人にしない
- 衣類をゆるめて楽にする
- 体温低下を防ぐため、毛布などをかけ暖かくする
- 吐物による窒息を防ぐため、横向きに寝かせる
- 吐きそうになったら、抱き起さずに横向きの状態で吐かせる
吐けば酔いが覚めて状態が改善すると考えがちですが、酔いつぶれた人を無理に吐かせようとすると吐物が逆流してのどに詰まり、窒息する可能性があります。意識が低下している場合は無理に吐かせようとせずに上記の5点を守りましょう。
また、大いびきをかいて痛覚刺激に反応しない、揺すって呼びかけても反応しない、体が冷たくなっている、倒れて口から泡を吐いている、呼吸状態が不安定などの兆候が現れた場合はすぐに救急車を呼びましょう。
ちなみに体調を崩すことがわかっていながら飲酒を強要し、急性アルコール中毒で死亡させた場合は刑法第205条(傷害致死罪)が適用され、3年以上の懲役が科せられることがあります。
(最終更新日:2021年12月21日)
| 佐久間 寛之(さくま・ひろし) 独立行政法人 国立病院機構 さいがた医療センター 院長/Sai-DAT ディレクター 医学博士、精神保健指定医、精神科専門医・指導医、精神保健判定医。 福島県立医科大学医学部卒。落合会東北病院診療部長、国立病院機構久里浜医療センター医長、全米アルコール乱用・依存研究所(NIAAA)客員研究員などを経て2018年よりさいがた医療センター勤務。専門はアルコール、薬物、ギャンブル、ゲーム・ネット依存など依存症全般。 |
| ●参考文献 イッキ飲み防止連絡協議会/特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会) 「STOP!アルコールハラスメント-死をまねく急性アルコール中毒を防ぐ」2013 東京消防庁 他人事ではない「急性アルコール中毒」2013 ●出典 「急性アルコール中毒」健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~(厚生労働省) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-001 |
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