降圧薬の種類と作用機序
2026.01.23

降圧薬の作用機序を理解することは、薬局薬剤師にとって欠かせません。 処方意図の推測、副作用の予測、患者への説明など、日常業務のあらゆる場面で役立ちます。 本記事では、主要な降圧薬の種類と作用機序を整理し、薬局での実践に活かせる視点を解説します。
目次
降圧薬治療の全体像
降圧薬は患者の病態や合併症に応じて選択されます。 単剤で開始し、効果不十分であれば作用機序の異なる薬剤を併用するのが基本的な考え方です。
血圧を下げる仕組みは、大きく以下の3つに分類できます。
- 心拍出量を下げる
- 末梢血管抵抗を下げる
- 循環血液量を減らす
各降圧薬はこれらのいずれか、または複数に作用して降圧効果を発揮します。
薬物療法は生活習慣改善との併用が前提となります。 減塩、運動、節酒、禁煙などの非薬物療法を継続しながら、必要に応じて薬物療法を行うことがガイドラインでも推奨されています。
カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)
Ca拮抗薬は日本で最も使用頻度の高い降圧薬です。 安定した降圧効果が得られるため、第一選択薬として広く処方されています。
作用機序
血管平滑筋細胞のL型カルシウムチャネルを遮断し、細胞内へのCa流入を抑制します。 Caの流入が減少すると血管平滑筋の収縮が抑えられ、血管が拡張します。 末梢血管抵抗の低下により降圧効果が得られる仕組みです。
特徴と主な副作用
降圧効果が強く、確実な血圧低下が期待できます。 食塩感受性の有無にかかわらず効果を発揮するため、幅広い患者に使用可能です。
主な副作用として、顔面紅潮、下肢の浮腫、動悸が挙げられます。 いずれも血管拡張作用に関連した症状であり、作用機序から理解できるでしょう。
薬局での指導ポイント
浮腫が出現した場合、心不全や腎機能低下との鑑別が必要です。 Ca拮抗薬による浮腫は下肢に生じやすく、利尿薬では改善しにくい特徴があります。 片側性や急激な体重増加を伴う場合は、速やかな受診勧奨が必要でしょう。 効果を実感しにくい薬剤のため、服薬継続の重要性を伝えることも大切です。
ARB・ACE阻害薬(RAA系阻害薬)
RAA系阻害薬は、臓器保護作用を持つ降圧薬です。 心臓や腎臓への保護効果が期待できるため、微量アルブミン尿または蛋白尿を合併する糖尿病やCKD合併例で、積極的に選択されます。
作用機序
アンジオテンシンⅡの産生または作用を抑制することで降圧効果を発揮します。 ACE阻害薬はアンジオテンシン変換酵素を阻害し、アンジオテンシンⅡの産生を抑えます。 ARBはアンジオテンシンⅡ受容体を遮断し、その作用を直接阻害します。
アンジオテンシンⅡの作用が抑制されると、血管収縮とアルドステロン分泌が抑えられます。 結果として、末梢血管抵抗の低下と循環血液量の減少により血圧が下がります。
特徴と主な副作用
降圧効果に加え、心臓リモデリングの抑制や腎保護作用が認められています。 蛋白尿を伴う糖尿病性腎症では、腎機能低下の進行を抑制する効果が期待できます。
主な副作用は、高カリウム血症と腎機能低下です。また、 ACE阻害薬では空咳が現れ、服薬中止の原因となることがあります。 空咳はブラジキニンの分解抑制が原因であり、ARBでは起こりにくい副作用です。
薬局での確認事項
定期的な検査値の確認が重要です。 血清カリウム値と腎機能(eGFR、クレアチニン)の推移を把握しておきましょう。 カリウム製剤やカリウム保持性利尿薬との併用では、高カリウム血症のリスクが高まります。
利尿薬
利尿薬は、循環血液量を減少させることで降圧効果を発揮します。 少量で効果が得られるため、特に高齢者の高血圧治療で使用されることが多い薬剤です。
作用機序と種類
腎臓でのナトリウム再吸収を抑制し、水分とともに尿中へ排泄を促進します。 循環血液量が減少することで、血圧が低下する仕組みです。
サイアザイド系利尿薬は遠位尿細管に作用し、降圧目的で最も多く使用される利尿薬です。 ループ利尿薬はヘンレループに作用し、利尿効果が強力なため心不全合併例で選択されます。 カリウム保持性利尿薬は集合管に作用し、カリウムの排泄を抑えながら降圧効果を発揮します。
主な副作用
電解質異常が代表的な副作用です。 サイアザイド系とループ利尿薬では低カリウム血症、低ナトリウム血症に注意が必要です。 高齢者では脱水や起立性低血圧のリスクも高まります。
薬局での指導ポイント
夏場や発熱時の水分摂取について説明しておくことが大切です。 めまいやふらつきが現れた場合は、脱水や電解質異常の可能性を考慮します。 症状が続く場合は受診を勧め、検査値の確認を促しましょう。
β遮断薬・α遮断薬
β遮断薬とα遮断薬は、交感神経系に作用する降圧薬です。 それぞれ異なる機序で降圧効果を発揮し、特定の病態で選択されます。
β遮断薬
心臓のβ1受容体を遮断することで、心拍数と心拍出量を低下させます。 腎臓でのレニン分泌も抑制されるため、RAA系の活性化を抑える効果もあります。
心不全や頻脈性不整脈、狭心症を合併する高血圧で選択されやすい薬剤です。 主な副作用として、徐脈、倦怠感、気管支収縮があります。 非選択的β遮断薬やカルベジロールは気管支喘息患者に禁忌であり、β1選択性の高いビソプロロールでも慎重投与とされています。 処方時は呼吸器疾患の有無を確認することが重要です。
α遮断薬
血管のα1受容体を遮断し、血管を拡張させることで降圧効果を発揮します。 前立腺肥大症を合併する高血圧で使用されることがあります。
起立性低血圧が起こりやすいため、特に高齢者では注意が必要です。 服用開始時や増量時には、立ちくらみについて説明しておきましょう。
その他の降圧薬
第一選択薬以外にも、特定の状況で使用される降圧薬があります。 使用頻度は低いものの、処方を見かけた際に対応できるよう知っておくとよいでしょう。
中枢性交感神経抑制薬(メチルドパなど)は、妊娠高血圧症候群で使用されます。 直接的血管拡張薬(ヒドララジンなど)は、他の降圧薬で効果不十分な場合に追加されることがあります。
薬局薬剤師が作用機序を活かす視点
作用機序の知識は、日々の業務に直結します。 処方意図を理解し、適切な服薬指導を行うために活用しましょう。
処方意図を推測する
処方された降圧薬から、患者の病態を推測できます。 ARBと利尿薬の併用であればCKDや心不全の合併、β遮断薬であれば心疾患の存在が考えられます。 推測した病態に基づいて、より適切な情報提供が可能になるでしょう。
副作用と作用機序を結び付ける
副作用の多くは作用機序から説明できます。 Ca拮抗薬の浮腫は血管拡張、ACE阻害薬の空咳はブラジキニン分解抑制が原因です。 作用機序を理解していれば、患者からの訴えに対して適切に対応できます。
併用療法時の注意点
作用機序の異なる薬剤の併用では、相加的な降圧効果が期待できます。 一方で、RAA系阻害薬とカリウム保持性利尿薬の併用では高カリウム血症のリスクが高まります。 作用機序を理解した上で、併用時の注意点を把握しておくことが大切です。
まとめ
降圧薬の作用機序を理解することは、薬局薬剤師としての基盤となる知識です。 処方意図の推測、副作用対応、患者説明など、さまざまな場面で活かしていきましょう。
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