コラム

降圧薬の使い分けと併用療法

降圧薬の選択は、患者の背景や併存疾患によって大きく異なります。 なぜこの薬剤が選ばれたのかを理解することで、服薬指導の質が向上するでしょう。 本記事では、降圧薬の使い分けと併用療法の考え方を整理し、薬局での実践に活かせる知識を解説します。

降圧薬使い分けの基本原則

降圧薬治療は、生活習慣改善を土台として行われます。 減塩、運動、節酒、禁煙などの非薬物療法を継続しながら、必要に応じて薬物療法を開始するのが基本です。

第一選択薬としては、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬の4種類が推奨されています。 単剤を少量から開始し、効果不十分であれば増量、それでも目標に達しなければ併用療法へ移行するのが一般的です。

「薬が効かない」と感じる場合でも、実際には病態に合っていないだけのことがあります。 食塩感受性の高い患者には利尿薬、交感神経亢進型にはβ遮断薬が有効など、病態に応じた選択が重要です。

薬局では、効果・副作用・継続性の3つの視点を意識しましょう。 血圧が下がっているか、副作用は出ていないか、きちんと飲めているかを確認することが基本となります。

患者背景別の使い分け

患者の年齢や状態によって、降圧薬の選択や用量は変わります。 薬局での聞き取りを通じて、背景を把握しておくことが大切です。

患者背景使い分けのポイント薬局での確認事項
高齢者・常用量の半量から開始し、1〜3か月かけて緩徐に増量する
・臓器血流の自動調節能低下により急激な降圧は避ける
・起立性低血圧(立ちくらみ、ふらつき)の有無
・転倒リスクの確認
若年者・交感神経亢進型が多く、心拍数が高い場合はβ遮断薬が選択されることがある・動悸や頻脈の訴え
・ストレスや生活習慣の状況
肥満・メタボリックシンドローム・インスリン抵抗性への影響が少ないARBやACE阻害薬が選択されやすい
・サイアザイド系利尿薬やβ遮断薬は代謝への悪影響に注意
・体重変化、血糖値や脂質の検査値推移
妊娠・妊娠可能年齢の女性・ARB・ACE阻害薬は妊娠中禁忌(胎児の腎障害リスク)
・メチルドパ、ラベタロール、ヒドララジンなどが使用される
・妊娠の可能性、避妊状況の確認
・妊娠判明時は速やかに受診するよう説明

高齢者では起立性低血圧や食後血圧低下が起こりやすく、家庭血圧の測定状況も含めて確認することが重要です。 妊娠可能年齢の女性にRAA系阻害薬が処方されている場合は、処方医から説明がなされていることが多いですが、薬局でも注意喚起を行いましょう。

併存疾患を踏まえた降圧薬選択

降圧薬は、血圧を下げる以外の目的で選択されることがあります。 併存疾患を把握しておくと、処方意図の理解につながります。

併存疾患推奨される降圧薬選択の理由・注意点
糖尿病ARB、ACE阻害薬・微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う場合は、腎保護の観点から特に推奨
CKDRAA系阻害薬・腎保護作用が期待できる
・eGFR30未満ではループ利尿薬への変更を考慮する
心不全・虚血性心疾患β遮断薬、RAA系阻害薬・降圧だけでなく、心機能保護
、予後改善が目的
脳血管疾患既往特定の薬剤より降圧度を重視・再発予防の観点から、厳格な血圧管理が求められる

糖尿病やCKDを合併する場合は、降圧だけでなく臓器保護を意識した薬剤選択がなされています。 処方内容から「血圧以外の目的」を読み取れると、服薬指導にも深みが出るでしょう。

併用療法の基本的な考え方

降圧薬の併用は、単剤の最大量を使うより少量ずつの併用が推奨されています。 作用点の異なる薬剤を組み合わせることで、効率よく降圧できます。

併用のメリットは降圧効果だけではありません。 Ca拮抗薬とARBの併用では、Ca拮抗薬による浮腫がARBの静脈拡張作用で軽減されることがあります。 このように、併用によって副作用を軽減できる場合もあります。

併用療法が必要となるのは、Ⅱ度以上の高度高血圧や、単剤でコントロール不良の場合です。 最初から2剤併用で開始することもあり、配合剤が処方されるケースも増えています。

代表的な併用パターン

ガイドラインで推奨される2剤併用パターンは主に3つあります。 いずれも作用機序の異なる薬剤を組み合わせたものです。

併用パターン併用の理論的根拠特徴・補足
Ca拮抗薬 + ARB/ACE阻害薬Ca拮抗薬の血管拡張作用とRAA系阻害薬の体液調節作用が相補的に働く・最も多く使用される組み合わせ
・浮腫の軽減効果も期待できる
ARB/ACE阻害薬 + 利尿薬利尿薬で活性化されるRAA系を阻害薬で抑制し、効率的に降圧できる・利尿薬による低カリウム血症をRAA系阻害薬が軽減
・食塩感受性高血圧に有効
Ca拮抗薬 + 利尿薬Ca拮抗薬のNa排泄作用と利尿薬の体液量減少作用がある・高齢者や食塩摂取量の多い患者に有効
・上記2パターンより使用頻度は低い

2剤で降圧目標に達しない場合は、ARB/ACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬の3剤併用が推奨されています。

また、心不全や虚血性心疾患を合併する場合は、上記の組み合わせにβ遮断薬が追加されることがあります。

避けたい・注意したい併用

ARBとACE阻害薬の併用は推奨されません。 効果の増強が限定的である一方、高カリウム血症や腎機能低下のリスクが高まります。

RAA系阻害薬とカリウム保持性利尿薬の併用も、高カリウム血症に注意が必要です。 定期的な検査値確認が欠かせない組み合わせといえるでしょう。

配合剤(合剤)の位置づけ

配合剤は、服薬アドヒアランス向上と錠数削減を目的として使用されます。 1日に飲む錠数が減ることで、飲み忘れの防止につながります。

一方で、用量調整が難しいという側面もあります。 どちらか一方の成分だけを増減したい場合には、単剤に戻す必要が出てきます。

副作用が出現した際に、原因成分の特定が難しいことも留意点です。 薬局では、配合剤に含まれる成分を患者に説明し、どの成分がどのような作用を持つかを理解してもらうことが大切です。

薬局薬剤師が果たす役割

降圧薬治療において、薬局薬剤師は継続的なモニタリングの担い手となります。 処方意図を理解し、患者の状態を把握することで、治療に貢献できます。

処方意図を読み取る

処方された薬剤から、患者の病態や併存疾患を推測することが大切です。 RAA系阻害薬が選択されていれば糖尿病やCKDの合併、β遮断薬があれば心疾患の存在が考えられます。 配合剤の場合は、含まれる成分から同様の推測が可能です。 処方意図を読み取ることで、服薬指導の内容も変わってきます。 患者への説明も、病態に合わせた内容にすることで理解が深まるでしょう。

副作用の早期発見と服薬状況の把握

空咳、浮腫、ふらつき、倦怠感など、降圧薬に特有の副作用を聞き取りましょう。 症状と薬剤の関連を理解していれば、適切な対応につなげられます。 また、降圧薬は長期継続が必要な薬剤であり、服薬状況の把握も欠かせません。 残薬の有無や飲み忘れの頻度を確認し、必要に応じてアドヒアランス向上の工夫を提案します。 配合剤への変更や、一包化の提案が有効な場合もあります。

医師との連携

副作用の疑いや服薬状況の問題があれば、処方医への情報提供を検討します。 トレーシングレポートなどを活用し、医師との連携を意識した対応を心がけましょう。 血圧値の推移や家庭血圧の測定状況も、有用な情報となります。 薬局で得た情報を共有することで、治療の質向上に貢献できます。

まとめ

降圧薬の使い分けと併用療法を理解することは、処方内容を深く読み解くことにつながります。 患者背景を把握し、個々の処方に込められた意図を理解した服薬指導を実践していきましょう。

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