統合失調症の病態生理と診断|薬剤師が押さえておきたい基礎知識と患者対応のポイント
2025.12.25

統合失調症は思春期から青年期に発症することが多く、長期的な治療と支援が必要となる精神疾患です。
病態生理は完全には解明されていないものの、神経伝達物質の異常を中心にさまざまな仮説が提唱されています。
薬剤師には疾患理解を踏まえた服薬支援や患者対応が求められるでしょう。
本記事では、統合失調症の病態生理と診断の考え方について、薬剤師が押さえておきたいポイントを中心に解説します。
目次
統合失調症とはどのような疾患か
統合失調症は、思考・感情・行動を統合する機能に障害が生じる精神疾患です。
幻覚や妄想などの精神病症状を特徴とし、症状の現れ方や経過には個人差が大きいことが知られています。
再発と寛解を繰り返しやすい疾患であるため、長期的な治療継続が重要となります。
統合失調症の主な症状分類
統合失調症の症状は、大きく3つに分類されます。
3つの分類と症状、特徴については、以下の表のとおりです。
| 分類 | 主な症状 | 特徴 |
| 陽性症状 | 幻覚(特に幻聴)、妄想、思考のまとまりのなさ | 健康な人にはないものが現れる症状 |
| 陰性症状 | 感情鈍麻、意欲低下、社会的引きこもり | 健康な人にはあるものが欠けていく症状 |
| 認知機能障害 | 注意力・記憶力の低下、実行機能の障害 | 脳の機能が低下する症状 |
陽性症状は抗精神病薬による改善が期待しやすい一方、陰性症状や認知機能障害は治療に難渋することがあります。
症状分類を理解することで、治療薬選択の背景を把握しやすくなるでしょう。
統合失調症の病態生理の考え方
統合失調症は単一の原因では説明できない多因子疾患と考えられています。
遺伝的要因と環境要因が複雑に関与しており、発症前から脳機能の脆弱性が存在するという見方が有力です。
ドパミン仮説とその位置づけ
ドパミン仮説は、統合失調症の病態理解において最も広く知られた仮説です。
中脳辺縁系におけるドパミン活性の亢進が陽性症状に関与すると考えられており、抗精神病薬の多くがドパミンD2受容体遮断作用を持つことがこの仮説を支持しています。
しかし、ドパミン仮説だけでは陰性症状や認知機能障害を十分に説明できません。
そのため、現在では「中心的だが不完全な仮説」として位置づけられています。
その他の神経伝達物質仮説
ドパミン仮説を補完する形で、複数の仮説が提唱されています。
グルタミン酸仮説は、NMDA受容体機能の低下が病態に関与するという考え方です。
セロトニン系についても、非定型抗精神病薬がセロトニン受容体に作用する点から関与が示唆されるでしょう。
現在では、複数の神経伝達系のバランス異常として統合失調症を捉える視点が主流となりつつあります。
神経発達仮説と脳構造の変化
神経発達仮説は、発達期の脳形成異常が統合失調症の基盤にあるとする考え方です。
画像研究では脳室拡大や灰白質減少が報告されており、発症前から微細な認知・行動変化がみられることもあります。
この仮説は、統合失調症が単なる神経伝達物質の異常ではなく、脳の発達過程における問題を背景に持つ可能性も示唆しています。
統合失調症の診断の基本的な考え方
統合失調症には、血液検査や画像検査による確定診断法が存在しません。
診断は症状と経過の評価に基づいて行われ、DSMやICDなどの診断基準が用いられます。
他の精神疾患や薬物影響、器質性疾患の除外が重要な過程となります。
診断において評価される主なポイント
診断では以下の点が総合的に評価されます。
- 症状の内容と持続期間(6か月以上の経過が診断基準に含まれる)
- 社会生活・職業機能への影響の程度
- 急性発症か徐々に進行したかという経過
- 気分障害や器質性疾患との鑑別
とくに、双極性障害の精神病症状や、薬物誘発性精神病との鑑別は臨床上重要です。
薬剤師が病態理解を活かせる場面
病態生理の理解は、日常の服薬指導において具体的に活かすことができます。
統合失調症は長期にわたる治療継続が必要な疾患であり、患者が服薬の意義を理解できるよう支援することが薬剤師の重要な役割です。
疾患の特性を踏まえた説明は、患者との信頼関係構築にもつながるでしょう。
実践的な活用例
抗精神病薬の継続服用の重要性を説明する際には、再発予防の観点が欠かせません。
統合失調症は再発を繰り返すことで予後が悪化する傾向があるため、症状が安定していても服薬継続が推奨されます。
副作用と治療効果のバランスを説明する場面では、ドパミン遮断作用による錐体外路症状と陽性症状改善の関係を理解しておくと説明に深みが出るでしょう。
まとめ
統合失調症は多因子が関与する複雑な精神疾患であり、病態生理にはドパミン仮説を中心に複数の考え方が存在します。
診断は症状と経過に基づいて総合的に行われ、確定的な検査法はありません。
薬剤師が病態と診断の基本を理解することで、より適切な服薬支援と患者対応が可能となるでしょう。
疾患への理解を深め、患者に寄り添った服薬指導を心がけましょう。
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