コラム

サリドマイド関連製剤が院内から院外調剤へ|薬局が押さえるべき連携と注意点

強い催奇形性から一度は使用中止となったサリドマイド関連製剤ですが、2008年に多発性骨髄腫の治療薬として再承認されて以降、厳格な安全管理のもとで使用されています。近年、院内処方から院外調剤への移行が進みつつあるのが、このサリドマイド関連製剤です。サリドマイド関連製剤は、調剤のルールや情報連携のあり方が通常の医薬品とは大きく異なります。

この記事では、サリドマイド系医薬品の処方箋を応需した際に慌てないよう、薬局薬剤師が事前に確認しておくべき必須知識と留意点を解説します。

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執筆者
藤野 紗衣
薬剤師ライター 藤野 紗衣
ドラッグストア約1年、病院薬剤師は総計30年(2病院)の勤務経験あり!
現在は薬剤師ライターとして医療記事や薬学記事の執筆をしています。

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株式会社医学アカデミー

なぜ院外調剤が進められているのか(背景と制度)

サリドマイド関連製剤はこれまで、TERMSRevMateといった厳格な安全管理手順に基づき、原則として医療機関内での取り扱いを前提としてきました。しかし、服薬中の患者が外来受診困難となり、在宅医療へ移行した場合の取り扱いが明確化されておらず、今回の流れとなったのです。

患者の治療継続を支えるため、事案に応じて合同運営委員会が個別に確認した上で特例として対応する方針が、2026年1月の第16回サリドマイド及びレナリドミドの安全管理に関する検討会において了承されました。これが今、院外調剤への移行が進み始めている背景です。

TERMSなど管理手順の要点整理

院外調剤に対応する上で欠かせないのが管理手順の理解です。TERMSとは、サリドマイドに係る情報提供、教育、登録、評価等を構成要素とする安全管理手順(Thalidomide Education and Risk Management System)のことで、その実施が製造販売承認の条件でした。また、類似の構造と催奇形性を持つレナリドミドやポマリドミドについても、同様の手順であるRevMateの実施が義務づけられています。

管理手順の最大の目的は、厳しい管理のもとで適正使用を推進し、胎児への曝露を防止することです。そのため患者を含む関係者は、本剤のリスクや避妊等の曝露回避方法について教育を受け、管理センターへ登録される必要があります。
手順には流通、処方・調剤、薬剤管理について詳細な記載があり、製造会社や医療機関自らが遵守状況を確認する仕組みとなっています。薬局もこの枠組みの一部として、ルールを正確に把握することが求められます。

なお、処方箋を受け付ける薬局自体も事前に管理センターへの施設登録が必要です。調剤にあたる薬剤師は所定の教育プログラム(eラーニングなど)の受講が必須となります。また、処方日数の上限や処方箋の有効期間の厳守など、遵守すべき実務上のルールが多岐にわたる点にも注意が必要です。

病院→薬局の情報連携で不足しがちなポイント

サリドマイド関連製剤の調剤では、通常の処方箋応需よりもはるかに緻密な情報連携が求められます。通常より手間はかかりますが、一つひとつのプロセスを確実に実施することが重要です。

まず、処方箋だけでは読み取れない「患者自身の理解度」や「副作用の初期症状の有無」について、病院と薬局で情報を共有する必要があります。院外処方を受ける際は、処方医療機関と保険薬局との間で、血液検査や妊娠反応検査などの結果を文書で共有する体制を整えなければなりません。

さらに在宅訪問の場合は、非常に特殊な手順を踏みます。薬剤師は遵守状況等を確認するためにまず患者宅を一度訪問し、問題がないことを確認してから一度薬局に戻って調剤を実施するというステップが必要です。

特に、本剤特有の副作用である末梢神経障害や深部静脈血栓症、重度の便秘などの初期症状には注意が必要です。服薬指導で得られた体調変化やアドヒアランスの状況は、トレーシングレポートなどを通じて速やかに処方医へフィードバックする双方向の連携が求められています。

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薬局は連携のために事前準備が大切

このような通常の調剤とは異なる特別な流れを、いかに調剤現場へ反映させ、多職種と連携していくかが薬局の腕の見せ所です。

事前の準備として、処方箋を応需する前に、病院側と必須情報(検査結果、副作用の初期症状、患者の理解度など)をどのように共有するか、専用の連絡票やセキュアなシステムを用いた確実な仕組みをあらかじめ取り決めておくことが重要です。

また、手間のかかる在宅訪問の特殊な手順は薬局内でマニュアル化を徹底します。同時に、初回訪問時に患者や家族へも丁寧に説明し、不満や不安を抱かせない工夫が不可欠です。
特に徹底すべきなのは、残薬の取り扱いです。サリドマイド関連製剤は、服薬中止や患者の死亡時に第三者(特に妊婦など)への曝露を防ぐため、家庭ゴミとしての廃棄は厳禁であり、必ず回収して適切な手順で返却・廃棄する義務があります。
服薬期間中だけでなく、こうした服薬終了後の確実な回収の流れについても事前に説明し、理解を得ておくことが安全管理の要となります。さらに、家族の誤薬防止や残薬管理といった厳重な取り扱いの必要性を訪問看護師やケアマネジャーら在宅チーム全体へ共有し、地域全体でリスク管理の目を光らせる体制を作りましょう。

まとめ

サリドマイド関連製剤の院外調剤は、単なるお薬の受け渡しではなく、薬局の高度な管理能力が問われるものと言えます。
ルールが厳しいためハードルは高いですが、確実な情報共有と運用体制の構築によって対応することは十分に可能です。
このような難易度の高い薬剤における高度な薬学管理と多職種連携の実践こそが、今後の地域医療における薬剤師職能の価値を大きく高める重要なポイントとなるでしょう。

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