コラム

令和8年度診療報酬改定について

令和8年1月23日中央社会保険医療協議会(以下、中医協)より、令和8年度診療報酬改定の個別改定項目(短冊)が公表されました。本記事においても個別の項目の詳細な部分を確認していきたいと考えていますが、改定の根拠となる背景や論点を総括的に把握することも、薬剤師として重要な視点の一つだと思います。 そこで、今回の改定に至る諮問会議での議論や、求められる薬局薬剤師像について触れておきたいと思います。

診療報酬改定率について

令和7年12月26日に令和8年度診療報酬の改定率が中医協から提示されました。

診療報酬は+3.09%の改定です。これは令和8年度及び9年度の2年度平均であり、令和8年度は+2.41%、令和9年度は+3.77%となっています。そのうち、賃上げ分が+1.70%、物価対応分が+0.76%(令和8年度+0.55%、令和9年度+0.97%)です。また、それぞれの施設類型ごとに配分があり、病院+0.49%、医科診療所+0.10%、保険薬局+0.01%としています。

なお、薬価については▲0.86%・国費ベースで▲1052億程度となりました。

令和8年度診療報酬改定の基本認識と基本方針および具体的方向性について

骨太の方針2025や、強い経済を実現する総合経済対策等の閣議決定に基づき、令和7年12月26日の中医協で診療報酬改定について次のように提示されました。

「令和8年度診療報酬改定は、経営の改善や従事者の処遇改善につながる的確な対応を行う。あわせて、現役世代の保険料負担の抑制のため、後発医薬品への置き換えの進展を踏まえた対応、適切な在宅医療の推進のための対応、調剤報酬の適正化、長期処方・リフィル処方の取り組み強化などを行う。」

また、令和7年12月12日の中医協で、令和8年度診療報酬改定の概要も公表されています。改定にあたっての具体的視点と、薬剤師に関連する方向性を要約すると以下のとおりです。

(1)物件費の高騰を踏まえた対応、医療従事者の処遇改善など、(2)2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域における医療の確保、かかりつけ薬剤師機能の評価など、(3)安心・安全で質の高い医療の推進、医療DXやICT連携を活用する薬局の体制の評価、地域の医薬品供給拠点としての薬局機能の適切な評価、薬局・薬剤師業務の対人業務の充実化など、(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直し、電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進など、です。

改定のポイントと薬局への影響

今回の改定では、廃止する評価料や加算がある一方で、改称や新設項目が多く、これまで以上に大きな変化のある改定だといえます。特に、門前薬局や医療モールにおける調剤薬局への影響が大きいと思われます。

また、加算要件に返品や配送への制限的な記載があるなど、流通のあり方が報酬要件として課題提起されています。加えて、重要供給確保医薬品の備蓄数へ努力義務も定められました。

服用薬剤調整支援料2では、「極めて高度な水準の専門性を有する薬剤師」であることが算定要件に入り、かかりつけ薬剤師に限定されるなど、今後研修の必要性が十分に高まることが予測されます。

これまでもそうでしたが、調剤報酬改定における重要な背景として、患者のための薬局ビジョンの実現にあると思われます。薬局ビジョン策定から10年が経過し現在の実態を課題ととらえ、保険薬局が立地依存の構造を脱却し、薬剤師の職能発揮を促進する観点から報酬の見直しが始まったのではないでしょうか。

まとめ

今回の令和8年度診療報酬改定は、単なる点数の増減ではなく、「薬局・薬剤師の役割そのものの再定義」を強く示唆する改定であるといえます。特に、対物業務中心から対人業務への転換、地域医療への主体的関与、そして医薬品供給体制の担い手としての責任強化が、これまで以上に明確に打ち出されました。

改定率において保険薬局への配分が極めて限定的であった点からも、従来型の処方箋応需モデルのみでは評価が伸びにくい方向性が示されています。一方で、かかりつけ機能、専門性の高い薬学的管理、在宅医療への参画、ICT・医療DXへの対応など、患者アウトカムに直接寄与する取り組みについては、今後も評価の軸となることが読み取れます。

また、重要供給確保医薬品の備蓄や流通への言及が報酬要件に含まれたことは、薬局が単なる調剤の場ではなく、地域の医薬品インフラとして位置付けられていることを示しています。これは、地域包括ケアシステムの中で薬局が果たすべき社会的役割が、制度的にも一段と重視され始めた表れといえるでしょう。

今後、薬剤師個人に求められるのは、専門性を裏付ける継続的な研修・学習だけでなく、多職種連携や患者支援を実践できる臨床対応力です。制度改定は負担増として捉えられがちですが、見方を変えれば、薬剤師の専門性が評価される領域を明確に示した改定でもあります。 本改定を単なる制度変更として受け止めるのではなく、「どのような薬剤師・薬局が今後求められるのか」を考える契機とし、自施設の役割や業務の在り方を見直すことが、これからの薬剤師キャリアにおいて重要になるといえるでしょう。

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