コラム

二次性高血圧の鑑別|薬剤師が知っておくべき気づきのポイント

高血圧患者の約90%は原因疾患が特定できない本態性高血圧ですが、一定割合では明確な原因を持つ「二次性高血圧」が存在します。

二次性高血圧を見逃すと、通常の降圧治療でも血圧がコントロールできないまま重篤な合併症につながる可能性があります。薬局では検査や診断を行う立場ではないものの、薬歴・OTC使用歴・症状の変化から「気づき」を得られる場面が少なくありません。

本記事では、薬剤師が知っておくべき二次性高血圧の鑑別ポイントを現場視点で整理します。

二次性高血圧とは何か

二次性高血圧とは、特定の原因疾患によって血圧が上昇する高血圧です。

高血圧全体の約5〜10%を占めるとされており、頻度は多くないものの、原因を治療することで血圧の改善・治癒が期待できる点が本態性高血圧と大きく異なります。

若年での発症や急激な血圧上昇、複数の降圧薬を使用しても血圧がコントロールできない「治療抵抗性高血圧」は、二次性高血圧を疑う重要なサインです。薬局では「なぜこの患者の血圧はコントロールできないのか」という視点を持つことが、早期発見につながります。

薬局で気づきたい「二次性高血圧を疑うサイン」

服薬指導や薬歴確認の場面では、治療抵抗性高血圧・若年発症・急激な血圧悪化の3点が特に重要なサインです。採血データの低カリウム血症や降圧薬開始後のCr上昇など、検査値の変化も見逃せません。

血圧経過・検査値・患者背景の3つの視点から、日常的に観察する習慣を持つことが大切です。

血圧経過・検査値からのサイン

これまで正常だった患者の急激な血圧悪化、複数の降圧薬を使用してもコントロール不良が続く状態、降圧薬開始後のCr(クレアチニン)上昇や腎機能の急な悪化は、見逃してはいけない変化です。

また、採血データで低カリウム血症が指摘された場合は、原発性アルドステロン症の可能性を示唆することがあります。血圧手帳や検査値の推移を継続的に確認する習慣が、気づきの精度を高めます。

患者背景・症状からのサイン

30〜40歳未満での高血圧発症は、二次性高血圧の頻度が相対的に高い年齢層です。

夜間頻尿・動悸・発汗・筋力低下など特徴的な症状の訴えがある場合も、原因疾患の存在を示唆する可能性があります。「急に上がった」「最近眠れない」「朝の血圧が特に高い」といった患者の言葉を軽視せず、丁寧に聞き取る姿勢が重要です。

主な二次性高血圧の原因疾患

二次性高血圧の原因疾患は多岐にわたります。薬局で遭遇する可能性のある主な疾患と、それぞれの特徴的なサインを整理します。

疾患特徴的なサイン薬局での着目点
腎実質性高血圧蛋白尿・eGFR低下NSAIDs長期使用歴の確認
腎血管性高血圧ACE阻害薬/ARB開始後のCr上昇降圧薬変更後の腎機能変化
原発性アルドステロン症治療抵抗性高血圧・低K血症(正常値でも否定できない)若年〜中年の治療抵抗性
褐色細胞腫発作性高血圧・頭痛・発汗・動悸血圧の大きな変動
クッシング症候群中心性肥満・満月様顔貌糖尿病・脂質異常症の合併
睡眠時無呼吸症候群いびき・日中の眠気・朝の高血圧肥満患者・朝の血圧高値

腎実質性高血圧・腎血管性高血圧

腎実質性高血圧は二次性高血圧の中で最も頻度が高く、慢性腎臓病(CKD)が代表的な原因です。蛋白尿やeGFR低下を伴うことが多く、NSAIDsの長期使用が腎機能悪化を助長している場合があります。OTC含め使用歴の確認が薬局の重要な役割です。

腎血管性高血圧は腎動脈狭窄によるRAA系の亢進が原因です。ACE阻害薬・ARB開始後に腎機能が急に悪化した場合は、腎血管性高血圧の可能性を念頭に置き、速やかに医師へ情報提供することが求められます。

原発性アルドステロン症・褐色細胞腫

原発性アルドステロン症は二次性高血圧の中で比較的頻度が高い疾患です。若年〜中年の治療抵抗性高血圧で疑われます。低カリウム血症を伴うことがありますが、低K値がなくても否定できないため、治療抵抗性や多剤使用が続く場合は積極的にスクリーニングを検討することが重要です。

褐色細胞腫は発作性の高血圧に加え、頭痛・発汗・動悸の「三徴」が特徴です。血圧の大きな変動を訴える患者では、症状のパターンを詳しく聞き取ることが手がかりになります。

クッシング症候群・睡眠時無呼吸症候群

クッシング症候群では中心性肥満・満月様顔貌といった変化に加え、糖尿病・脂質異常症を合併していることが多くあります。ステロイド薬の長期使用歴がある患者でも同様の病態が生じる可能性があるため、薬歴との照合が重要です。

睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、いびき・日中の強い眠気・朝の高血圧が特徴です。肥満患者での頻度が高く、「朝だけ血圧が高い」という訴えが診断の糸口になることがあります。

薬剤性高血圧にも注意

二次性高血圧の原因として見落とされやすいのが、薬剤そのものによる血圧上昇です。患者自身が「薬のせいとは思っていない」ケースも多く、薬局での薬歴確認と聴取が診断の手がかりになります。

注意すべき薬剤と薬局での対応

NSAIDs・ステロイド・経口避妊薬・エリスロポエチン製剤・交感神経刺激薬(市販感冒薬など)は血圧を上昇させる可能性があります。

特に甘草を含有する漢方薬では偽アルドステロン症による血圧上昇・低カリウム血症が生じることがあり、自己購入している場合は薬歴に記録されないことがあるため注意が必要です。服薬指導時に「市販薬や漢方薬を自分で買って飲んでいることはありますか」と確認する一言が、薬剤性高血圧の早期発見につながるでしょう。血圧が急に悪化したタイミングで新たな薬剤が加わっていないか、時系列で確認する習慣を持つことが大切です。

薬剤師ができる早期発見のポイント

薬局薬剤師は診断を行う立場ではないものの、日常的な薬歴管理・検査値確認・症状聴取を通じて、二次性高血圧の「気づき」に貢献できます。

以下のポイントを意識することで、早期発見・受診勧奨の精度が高まります。

検査値・薬歴からの気づき

血圧手帳の変化や処方内容の推移を継続的に確認し、「降圧薬が増えているのに血圧が改善しない」状況は治療抵抗性のサインとして捉えましょう。

K値・Cr値の変動は原発性アルドステロン症や腎血管性高血圧を示唆することがあり、採血結果を共有してもらえる環境では積極的に確認することをおすすめします。NSAIDs・漢方薬・OTC薬の使用歴は処方箋だけでは把握できません。服薬指導時の問いかけが、薬剤性高血圧の発見につながる重要な機会です。

症状聴取と医師への情報提供

発汗・動悸・筋力低下・日中の強い眠気など、二次性高血圧に特徴的な症状を聴取するための問いかけを指導の流れに組み込むことが効果的です。「最近急に血圧が上がった」「薬を増やしても効いている気がしない」という患者の訴えは軽視せず、医師への情報提供・受診勧奨につなげましょう。情報提供の際は「いつから・どんな症状が・検査値はどう変化したか」を整理して伝えることで、医師が鑑別を進めやすくなります。

服薬指導時の実践アプローチ

二次性高血圧の可能性を念頭に置いた服薬指導では、アドヒアランス不良との区別が重要です。「薬を飲み忘れているから血圧が高いのか」「薬は飲んでいるのに高いのか」を丁寧に確認することが、次のアクションにつながります。

確認すべき項目と指導のポイント

OTC薬・健康食品・漢方薬の自己購入は処方薬と別に確認します。

特に甘草含有漢方(葛根湯・芍薬甘草湯など)は身近に入手できるため、意識せず長期使用しているケースがあります。

夜間症状(いびき・頻尿・発汗)や睡眠状況の聴取も有用です。朝の血圧が特に高い場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性を念頭に置き、家庭血圧測定を継続するよう指導しましょう。

測定タイミング(起床後・就寝前)を統一するよう伝えることで、血圧変動のパターンを把握しやすくなります。

まとめ

二次性高血圧は頻度こそ高くないものの、見逃すことで治療抵抗性や重篤な合併症につながる可能性があります。

若年発症・急激な悪化・治療抵抗性は、二次性高血圧を疑う重要な手がかりです。 薬歴・OTC使用歴・症状の聴取は、薬剤師だからこそ把握できる情報であり、医師が気づきにくい部分を補える場面があります。「いつもと違う」という変化に気づき、適切に医師へ情報提供・受診勧奨につなげることが、薬局が二次性高血圧のゲートキーパーとして機能するための第一歩です。

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