コラム

高血圧の診断基準と評価|薬局薬剤師が知るべき判断の視点

高血圧の診断は医師が行うものですが、薬局薬剤師も血圧評価の基本を理解しておく必要があります。 患者から血圧値を聞き取る場面や、受診勧奨を検討する場面は日常的に訪れるためです。 本記事では、高血圧の診断基準と評価方法について解説し、薬局での実践に活かせる知識を整理します。

高血圧診断の基本的な考え方

高血圧は1回の測定で診断するものではありません。 血圧は常に変動する指標であり、複数回・複数日にわたる測定結果をもとに評価するのが原則です。

ストレス、運動、食事、睡眠不足など、さまざまな要因で血圧は変動します。 健診で一度高値を示しただけでは、直ちに高血圧とは判断できないでしょう。 診断には、異なる日に複数回測定した値を総合的に評価することが求められます。

薬局でできること、できないことを明確にしておくことも重要です。 高血圧の「診断」は医師の専門領域であり、薬剤師が行うことはできません。 一方で、血圧値の「評価」や「受診勧奨」は薬剤師の役割として認められています。 患者の血圧値を把握し、必要に応じて医療機関への受診を促すことは、薬局薬剤師の重要な業務となります。

診察室血圧の診断基準と測定の留意点

診察室血圧は、医療機関で測定される血圧を指します。 診断基準は、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上です。

測定条件による影響

診察室血圧は測定条件によって大きく変動します。 測定前に5分以上の安静を取ること、背もたれのある椅子に座り足を床につけた姿勢で測定すること、会話をしないことなどが推奨されています。 これらの条件が守られていない場合、測定値の信頼性は低下するでしょう。

診察室血圧の限界

診察室血圧には限界があることも、理解しておく必要があるでしょう。 医療機関という環境や医療従事者の前での緊張により、普段より高い値が出ることがあります。 この現象は「白衣効果」と呼ばれ、多くの患者に認められます。 患者から診察室血圧を聞き取る際は、測定条件や測定時の状況も併せて確認することが望ましいです。

家庭血圧の診断基準と重要性

家庭血圧の診断基準は、診察室血圧より5mmHg低い135/85mmHg以上とされています。ガイドラインでは、診断や治療効果の判定において家庭血圧を優先することが明記されています。

家庭血圧が重視される理由

家庭血圧が重視される理由は複数あります。 第一に、日常生活における血圧をより正確に反映できる点です。 診察室では緊張して血圧が上がる患者も、自宅ではリラックスした状態で測定できるでしょう。

第二に、予後予測能が高いことが挙げられます。 複数の研究により、家庭血圧は診察室血圧よりも心血管イベントの発生と強く関連することが示されています。

薬局での家庭血圧測定の勧め方

患者に家庭血圧測定を勧める際は、具体的な方法を伝えることが効果的です。 測定タイミングは朝と就寝前の1日2回が推奨されます。朝は起床後1時間以内に、トイレを済ませてから朝食や服薬の前に測定します。 各回2回ずつ測定し、その平均値を記録するのが望ましいでしょう。 血圧手帳やアプリを活用した記録を勧めることで、継続率の向上が期待できます。

特殊な血圧パターンの評価

診察室血圧と家庭血圧の値が異なるケースがあります。

薬局でも把握しておきたい代表的なパターンを紹介します。

白衣高血圧

白衣高血圧は、診察室血圧が高値で家庭血圧が正常なパターンです。 臓器障害リスクは持続性高血圧より低いとされますが、将来的に持続性高血圧へ移行するリスクがあります。 経過観察として定期的な血圧測定の継続が必要でしょう。

仮面高血圧

仮面高血圧は、診察室血圧が正常で家庭血圧が高値なパターンです。 薬局では見逃されやすい点が問題となります。 診察室で正常値を示すため、患者自身も医療者も問題ないと判断しがちです。

仮面高血圧を疑うべき患者像として、喫煙者、精神的ストレスが高い人、早朝に頭痛がある人、降圧薬服用中でも家庭血圧が高い人などが挙げられます。 心血管イベントリスクは持続性高血圧と同程度とされており、見逃しは避けたいところです。

治療中の血圧評価

降圧薬を服用中の患者では、診察室血圧だけで評価すると実態を見誤ることがあります。 診察室では良好にコントロールされているように見えても、家庭血圧が高値を示すケースが存在します。 治療効果の判定には、診察室血圧と家庭血圧の両方を確認することが重要です。

高血圧評価におけるリスクの考え方

血圧値だけで治療方針を決定するわけではありません。 心血管リスク全体を評価する視点が求められます。

確認すべき併存疾患と背景因子

糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病(CKD)の有無は重要な確認事項です。 これらを合併する場合、より厳格な血圧管理が必要となります。

喫煙、肥満、高齢、心血管疾患の家族歴なども評価に含めるべき因子です。 すでに心臓・脳・腎臓に障害がある場合は、高リスク群として位置づけられます。

薬局で聞き取れる情報の活かし方

薬局では、処方内容から併存疾患を推測できます。 たとえば、糖尿病治療薬やスタチンが処方されていれば、複合的なリスク管理が必要な患者と判断できるでしょう。 お薬手帳の確認や患者との会話を通じて、血圧以外のリスク因子も把握しておくことが大切です。

薬局薬剤師が行う評価と受診勧奨の実践

ここまでの知識を、実際の薬局業務に活かすためのポイントを整理します。

受診勧奨の判断基準と伝え方を確認しましょう。

すぐに受診を勧めたい血圧値

収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上(Ⅲ度高血圧)の場合は、速やかな受診勧奨が必要です。 頭痛、胸痛、息切れなどの症状を伴う場合は、より緊急性が高いと判断します。

経過観察を提案できるケース

高値血圧(130-139/80-89mmHg)で症状がなく、他のリスク因子も少ない場合は、まず生活習慣の改善を提案できます。 家庭血圧の測定を開始し、1〜3ヶ月後に再評価するよう勧めるのが妥当でしょう。

受診勧奨時の伝え方

受診を勧める際は、不安をあおらない伝え方を心がけます。 「少し血圧が高めの数値なので、一度先生に相談されてみてはいかがでしょうか」といった表現が適切です。 数値の意味を簡潔に伝え、放置した場合のリスクと受診のメリットを説明します。 医師への情報提供として、薬局で把握した血圧値や服薬状況を伝える旨を患者に説明することで、受診への抵抗感を軽減できます。

まとめ

高血圧の診断と評価の知識は、日々の服薬指導や健康相談に直結するものです。 診断は医師が行うものという前提を踏まえつつ、薬剤師として適切な評価と受診勧奨を実践していきましょう。

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