抗うつ薬の種類と作用機序|薬剤師が押さえておきたい分類と服薬指導のポイント
2025.12.25

うつ病やうつ状態の治療において、抗うつ薬は中心的な役割を担っています。
抗うつ薬には複数の種類があり、作用機序や副作用プロファイルが大きく異なることから、薬剤師には処方意図を理解したうえでの服薬指導や副作用モニタリングが欠かせません。
本記事では、抗うつ薬の主な種類と作用機序を整理し、薬剤師が現場で活用できる実践的なポイントについて解説します。
目次
抗うつ薬を理解するための基礎知識
抗うつ薬の理解には、うつ病の病態に関する基本的な知識が欠かせません。 現在広く支持されているモノアミン仮説では、脳内のセロトニン・ノルアドレナリン・ドパミンといった神経伝達物質の機能低下がうつ病の発症に関与すると考えられています。
モノアミン仮説と各神経伝達物質の役割
セロトニンは気分の安定や不安の調整に関与し、ノルアドレナリンは意欲や集中力に影響を与えます。 ドパミンは快感や報酬系に関わっており、これらの物質のバランスが崩れることで抑うつ症状が出現するとされています。 抗うつ薬はこれらの神経伝達物質の機能を調整することで効果を発揮しますが、即効性はありません。 効果発現までには通常2〜4週間程度を要するため、患者への継続服用の重要性の説明が不可欠です。
抗うつ薬の主な分類と全体像
抗うつ薬は作用機序により複数の系統に分類されます。 主な分類は以下のとおりです。
| 分類 | 主な作用機序 | 代表的な薬剤 |
| SSRI | セロトニン再取り込み阻害 | パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム |
| SNRI | セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害 | デュロキセチン、ベンラファキシン |
| NaSSA | α2受容体遮断によるノルアドレナリン・セロトニン遊離促進 | ミルタザピン |
| 三環系 | 複数の受容体に作用 | アミトリプチリン、イミプラミン |
| 四環系 | ノルアドレナリン系への作用 | ミアンセリン、マプロチリン |
現在の処方の中心はSSRIおよびSNRIであり、忍容性の高さから第一選択薬として用いられる機会が多くなっています。
SSRIの作用機序と特徴
SSRIはセロトニントランスポーターを選択的に阻害し、シナプス間隙のセロトニン濃度を上昇させることで効果を発揮します。 三環系抗うつ薬と比較して抗コリン作用や心毒性が少なく、安全性の面から広く使用されています。
代表的なSSRI製剤と副作用
パロキセチンは抗不安作用が比較的強く、セルトラリンは薬物相互作用が少ない点が特徴です。 エスシタロプラムはセロトニン選択性が高く、副作用が出にくいとされています。
主な副作用として、悪心・下痢などの消化器症状、性機能障害、投与初期の不安・焦燥感が挙げられます。
服薬指導時のポイント
効果発現まで時間がかかることを事前に説明し、患者の自己中断を防ぐことが重要です。 「最初の1〜2週間は効果を実感しにくいですが、継続することで改善が期待できます」といった声かけが有効でしょう。 投与初期に不安感が増強する可能性があることも伝えておくと、患者の不安軽減につながります。
SNRIの作用機序と特徴
SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの両方の再取り込みを阻害する薬剤です。
SSRIがセロトニン系のみに作用するのに対し、SNRIはノルアドレナリン系への作用が加わる点が大きな違いです。ノルアドレナリンは意欲や集中力に関与するため、意欲低下が顕著な症例ではSNRIが選択されることがあります。
また、デュロキセチンは糖尿病性神経障害に伴う疼痛や線維筋痛症にも適応を有しており、身体症状を伴ううつ病で処方される機会が多いでしょう。
一方、ノルアドレナリン系への作用により血圧上昇、動悸、発汗などの副作用が生じる可能性があるため、高血圧や心疾患を有する患者では血圧や脈拍のモニタリングが欠かせません。
NaSSA
NaSSAはα2アドレナリン受容体を遮断することで、ノルアドレナリンとセロトニンの遊離を促進します。 代表的な薬剤であるミルタザピンは鎮静作用や食欲増進作用を有しており、不眠や食欲低下を伴う患者で選択されるケースが多いでしょう。
三環系・四環系抗うつ薬の位置づけ
三環系抗うつ薬は強力な抗うつ効果を持つ一方、抗コリン作用や心毒性のリスクがあります。 口渇、便秘、尿閉、起立性低血圧などの副作用に注意が必要です。 高齢者では認知機能への影響や転倒リスクの増加も懸念されるため、使用は慎重に検討されます。
四環系抗うつ薬は三環系と比較して抗コリン作用は軽減されていますが、現在では処方頻度は低下しています。
離脱症状と併用注意
抗うつ薬、特にSSRIやSNRIの急な中止は離脱症状を引き起こす可能性があります。 めまい、頭痛、倦怠感、感覚異常などが代表的な症状であり、減量は段階的に行う必要があるでしょう。 併用注意として、他の抗うつ薬やトリプタン製剤などセロトニン作動薬との併用ではセロトニン症候群のリスクに留意が必要です。
患者からよくある質問への対応例
「いつまで飲み続けるのか」という質問に対しては、再発予防のため症状改善後も一定期間の継続が推奨されることを説明します。 一般的には初発の場合で6〜9か月、再発を繰り返す場合はさらに長期の維持療法が検討されます。
「一生飲み続ける必要があるのか」という不安には、病状の経過により減薬・中止が可能なケースもあることを伝え、主治医との相談を促すとよいでしょう。
まとめ
抗うつ薬は、種類ごとに作用機序と副作用の特徴が異なります。 薬剤師が分類と特徴を理解することで、処方意図を読み取り、より的確な服薬指導が可能となるでしょう。 適切な服薬指導や副作用説明は、患者の治療継続を支える重要な役割を担っています。 抗うつ薬の知識を日常の服薬指導や疑義照会に積極的に活かし、患者のアドヒアランス向上に貢献していきましょう。
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