コラム

疑義照会のポイントは?|薬剤師が押さえるべき基本手順と記録の書き方、電話のコツ

医師に疑義照会をしたあと、「本当に照会が必要だったのか」「言い方が悪かったかもしれない」とモヤモヤした経験はないでしょうか。

疑義照会は薬剤師の大切な業務である一方、医師とのやり取りに苦手意識を持つ方も少なくありません。しかし、判断基準と手順を押さえてしまえば、その迷いはぐっと減らせます。

この記事では、疑義照会の定義や種類、照会すべきかどうかの判断基準、医師・患者への伝え方、記録の書き方までを、現場でそのまま使える形で整理します。

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執筆者
佐藤 美柚
薬剤師ライター 佐藤 美柚
総合病院門前の薬局で勤務中(7年目)。研修認定薬剤師、NR・サプリメントアドバイザーの資格を取得。 在宅や学校薬剤師など幅広く活動しています!
2児のママ薬剤師をしながら、医療ライターとしてさまざまな記事を執筆しています。
編集
株式会社医学アカデミー

疑義照会とは

疑義照会とは、薬剤師が処方箋の内容に疑問や不明な点を見つけたとき、調剤する前に処方医へ問い合わせて確認する行為を指します。

これは薬剤師が任意で行うものではなく、薬剤師法第24条で定められた法律上の義務です。用量の誤りや併用禁忌など、処方の段階で見落とされた問題に薬剤師が気づくことで、防げる健康被害は少なくありません。

処方箋に疑わしい点があるまま調剤してはならないと明記されているのは、薬剤師が薬物治療の最後の砦だからです。

医師にも回答する義務がある

疑義照会は、薬剤師だけが気を遣って行うものではなく、医師とともに処方の安全を守る仕組みです。

医師の側にも、保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第23条2項によって、薬剤師からの照会に応じる義務が課されています。

厚生労働省の資料「処方箋の交付等に関連する法令の規定」でも、この双方向の関係を確認できるでしょう。電話口で素っ気ない対応をされたとしても、照会自体は両者に課せられた正当な業務であり、薬剤師が引け目を感じる必要はありません。

出典:薬剤師法|e-Govポータル
出典:処方箋の交付等に関連する法令の規定|厚生労働省

疑義照会の2つの種類

疑義照会は、確認する内容によって大きく以下の2種類に分けられます。

  • 形式的疑義照会:処方箋の記載上の不備を確かめる
  • 薬学的疑義照会:薬学的な視点から処方内容そのものを確かめる

どちらにあたるかを意識すると、照会の目的や医師への伝え方が整理しやすくなります。

薬学的疑義照会は患者の安全に直結するぶん、形式的なものより急ぎや慎重さが求められる場面も多いでしょう。

形式的疑義照会

形式的疑義照会は、処方箋の記載に形式的な不備があるときに行います。

用量や日数の記載漏れ、記名押印の不足、保険情報の誤りなど、処方の意図そのものではなく「書き方」に関わる確認が中心です。

「外用薬の患部の記載がない」「頓服薬に1日の使用回数や服用間隔の指定がない」といった場面が、その典型といえるでしょう。

薬学的な判断を要さないケースが多く、内容も明確なため、比較的スムーズに進めやすい傾向があります。

薬学的疑義照会

薬学的疑義照会は、処方内容に薬学的な懸念があるときに行います。

用量が年齢や体重に見合っているか、併用禁忌や重複投与がないかなど、患者の安全に直結する点を確認するのが特徴です。

「小児に成人量が処方されている」「すでに同種同効薬を服用している患者に、似た作用の薬が追加されている」といった場面が代表例にあたります。

形式的な照会よりも専門的な判断を伴うため、次に述べる判断基準や伝え方がとくに役立つでしょう。

疑義照会が必要かどうかの判断基準

「これは照会すべきか」と迷ったときは、患者の安全に関わるかどうかを軸に考えると判断しやすくなります。

形式的な不備と薬学的な懸念では着目する点が異なるため、それぞれの目安を持っておくと、その場で落ち着いて動けるでしょう。

迷ったまま調剤を進めるより、ひと手間かけて確認したほうが安心できる場面は少なくありません。照会するか迷うこと自体が、患者を守ろうとしている姿勢のあらわれでもあります。

形式的な不備を見分けるポイント

形式的疑義照会が必要になるのは、処方箋の記載だけでは調剤を確定できないときです。

用法・用量や投与日数が抜けている、規格や剤形が特定できない、記名押印や保険情報に不備があるといったケースが代表的にあげられます。

判断そのものは難しくないため、見つけた時点で淡々と確認すれば十分です。

曖昧なまま進めると、調剤過誤や保険請求の差し戻しにつながることもあるため、早めに処方医へ確認しておくと安心でしょう。

薬学的な確認が必要なポイント

薬学的疑義照会を検討したいのは、処方どおりに調剤すると患者に不利益が生じるおそれがあるときです。

用量が添付文書の範囲を超えている、相互作用や併用禁忌が疑われる、同じ作用の薬が重複している、腎機能や年齢に対して用量が見合っていないなどが、代表的なサインといえるでしょう。

判断に迷うときは、過去の処方歴やお薬手帳、検査値をたどると手がかりが見つかるはずです。

確信が持てなければ照会して処方意図を確かめるほうが、結果的に患者と自分の両方を守ることにつながります。

照会をためらってしまうときの考え方

「こんなことで連絡してよいのか」とためらう気持ちは、多くの薬剤師が一度は感じるものです。

迷ったときは、その疑問を放置したまま調剤した場合に患者がどうなるかを想像してみると、判断の助けになります。

確認して何ともなければ、それは患者の安全が裏づけられたということであり、決して無駄なやり取りではありません。

気になった点は軽微に見えても早めに確認する習慣をつけると、迷う時間そのものが減り、照会への苦手意識もやわらいでいきます。

経験を重ねるほど「確認しておいてよかった」と感じる場面は増えていくでしょう。

判断に自信が持てないときは、先輩や同僚に「これは照会すべきか」と一声かけるのも、立派な確認方法のひとつです。経験のある薬剤師ほど、ひとりで抱え込まずに周囲へ相談しながら判断を重ねています。

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疑義照会の手順と医師への伝え方

疑義照会がうまくいくかどうかは、電話の前の準備で大きく変わります。

情報を整理し、要点を順序立てて伝えるだけで、医師にも内容が伝わりやすくなるでしょう。

ここでは、医師への連絡、変更に応じてもらえなかったときの対応、患者への声かけという3つの場面に分けて見ていきます。

電話前の準備と伝え方のコツ

医師に電話する前に、次の3点を手元にまとめておくと、落ち着いて連絡できます。

整理する項目押さえること
患者名誰の処方についての照会か
照会内容どの薬の・何が気になるのか
代替案どう変更してほしいか(具体的な案)

準備がないまま連絡すると、説明が長くなったり聞き返されたりして、やり取りに時間がかかりがちです。伝えるときは「誰の・何について・どうしてほしいか」の順を意識すると、短く正確に要件が伝わります。

下の例文も、この順番に沿った組み立てです。

「○○クリニックの△△先生でしょうか。 (誰の)本日処方の患者・山田太郎さんについて確認させてください。 (何について)○○錠が1日3錠で処方されていますが、添付文書では上限が1日2錠となっております。 (どうしてほしいか)1日2錠への変更は可能でしょうか。」

代替案まで添えておくと、医師は判断を返すだけで済み、「ではそれで」と短く返答してもらいやすくなるでしょう。

電話中は、次のような点を意識すると、聞き間違いや二度手間を防げます。

  • 外来が混み合う時間帯は、できるだけ避けて連絡する
  • 早口にならず、一文ずつ区切って話す
  • 回答はメモを取りながら復唱して確認する
  • 反応が冷たく感じても、感情ではなく事実と依頼を中心に淡々と伝える

相手の時間をいただいているという姿勢が伝われば、医師の対応もやわらかくなりやすいものです。慣れないうちは緊張してしまっても、用件を順序立てて伝えられれば問題ありません。

変更に応じてもらえなかったときの対応

照会の結果、医師が処方を変更しないと判断することもあります。

その場合でも、処方の意図を確認できていれば、元の処方どおりに調剤して問題ありません。

医師には医師の治療方針があり、薬剤師が懸念を伝えたうえでの決定であれば、正当な処方意図にもとづく判断だからです。

それでも安全面で強い懸念が残る場合は、懸念の内容を記録に明記したうえで、必要に応じて再度相談する選択肢もあります。

なお、変更にならなかった場合も、照会した事実と医師の回答は記録に残しておきましょう。大切なのは「変更させること」ではなく「疑問を解消し、処方意図を確認すること」だと考えると、断られても気持ちを引きずらずにすみます。

患者への声かけ

疑義照会で患者を待たせるときは、医師の対応を否定しない伝え方を心がけましょう。

「先生の処方が間違っている」といった言い方は、患者の不安や医師への不信を招きかねません。

「お薬の内容を念のため確認しています」「より安心してお使いいただくために確認しています」のように前向きな表現へ置き換えると、患者に余計な心配を与えずにすみます。

確認は患者の安全を守るための手続きだと伝われば、待ち時間にも納得してもらいやすくなるでしょう。

待ち時間が長くなりそうなときは、見込みの時間をひと言添えておくと、患者の不安をやわらげられます。

疑義照会の書き方(処方箋・薬歴への記録)

疑義照会を行ったら、その内容と結果を記録に残す必要があります。

これは単なる事務作業ではなく、薬剤師法施行規則第15条第3号で、処方箋に照会結果を記載することが義務づけられているためです。

記録は、後から経緯を確認できるようにするだけでなく、医療安全やトラブル防止の面でも欠かせません。

記録に残す基本項目

記録には、後から見て経緯が分かる情報を、過不足なく残すことが大切です。最低限、次の項目を押さえておきましょう。

  • 照会した日時
  • 対応した医師名(照会先の医療機関名)
  • 照会内容(どの薬の・何を確認したか)
  • 医師の回答(どう判断されたか)
  • 変更後の処方内容(変更があった場合)

とくに「誰がいつ照会し、医師がどう判断したか」が抜けていると、後から経緯を追えなくなるため注意が必要です。

処方箋には結果を簡潔に、薬歴には判断の経緯まで含めて書いておくと、次回以降の対応にも役立ちます。誰が読んでも事実を追えるように書くことが、良い記録の第一歩です。

記録の例文(形式的・薬学的)

実際の記録は、簡潔さと正確さの両立がポイントになります。

形式的疑義照会と薬学的疑義照会で、それぞれ書き方の例を見てみましょう。

【形式的疑義照会の例】

 疑義照会日時:○月○日 14:30/照会先:○○クリニック △△医師 照会内容:アムロジピン錠の規格(2.5mg・5mg)の記載がないため確認。 回答:5mg錠で調剤するよう指示。処方箋に追記して調剤。

【薬学的疑義照会の例】

 疑義照会日時:○月○日 16:10/照会先:○○病院 △△医師 照会内容:ワルファリンとミコナゾールの併用について、相互作用の懸念を伝えて確認。 回答:ミコナゾールを中止し、別剤への変更を指示。変更後の処方で調剤。

いずれも、照会の事実と医師の判断、その後の対応が一目で分かる形にまとまっています。日時・相手・内容・回答・対応という型を持っておくと、書き方に迷う時間が減り、記録の質も安定するでしょう。

避けたいのは、医師の回答だけを書いて「なぜ照会したか」が抜けてしまう書き方です。

照会の理由が残っていないと、後から読んだ人には判断の妥当性が伝わりません。略語や略記も、自分以外が読むことを前提に、誰が見ても分かる表現を選ぶと安心です。

記録は記憶が鮮明なうちに、照会の直後に書き残す習慣をつけておきましょう。

慣れるまでは院内やチェーンの記載ルールに沿って書くと、迷いが少なく、ほかのスタッフとも整合性を保ちやすくなります。

出典:薬剤師法|e-Govポータル

まとめ

疑義照会は、薬剤師が患者の安全を守るために欠かせない、法律で定められた業務です。

医師にも回答する義務があり、決して薬剤師ひとりが気を遣って行うものではありません。

形式的か薬学的かを見分け、患者の安全に関わるかどうかで要否を判断すれば、「本当に必要だったのか」という迷いは少しずつ減っていきます。

電話の前に要点を整理し、「誰の・何について・どうしてほしいか」の順で伝えれば、医師とのやり取りも構えずに進められるでしょう。

手順と書き方を一つずつ身につけて、疑義照会を「避けたい業務」から「自信を持てる業務」へと変えていきましょう。

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