薬剤師が解説!着圧ソックスの違いと選び方
2025.09.09

足のむくみや疲れ対策として人気の「着圧ソックス」。しかし、市販品から医療用まで種類が豊富で、どれを選べばよいか迷う方も少なくありません。本記事では、薬剤師の視点から着圧ソックスの仕組みや違い、目的に応じた選び方を解説します。
目次
着圧ソックスとは?
着圧ソックスとは、足に適度な圧力をかけることで血流やリンパの流れをサポートし、むくみや疲労を軽減するためのアイテムです。立ち仕事やデスクワークで長時間同じ姿勢をとる方や、冷えや夕方の足のだるさに悩む方などに広く利用されています。
日常の「足のむくみ対策」や美容目的で気軽に取り入れやすく、タイプやデザインも豊富です。まずはその基本的な役割と使い方を理解しておきましょう。
着圧ソックスの仕組みと効果
着圧ソックスは、医学的にも根拠のある「段階着圧設計」により下肢静脈の血流を改善し、むくみや疲労を軽減する効果があります。さらに、着圧レベルを示す数値はmmHgという単位で表し、軽度のむくみケアから下肢静脈瘤やリンパ浮腫などの治療補助まで幅広く応用されます。
次の項目では、この「段階着圧の仕組み」「着圧レベルの違い」「医療用と市販品の特徴」を整理しながら、適切な選び方の基準を解説していきます。
段階着圧の仕組み
着圧ソックスの最大の特徴は「足首を最も強く締め、ふくらはぎから太ももにかけて徐々に圧を弱めていく」という設計です。これにより、足にたまりがちな血液やリンパ液を効率よく心臓へ戻す働きが期待できます。
たとえば、長時間の立ち仕事やデスクワークでは重力の影響で下肢に血液が滞留しやすく、夕方にはむくみやだるさが強くなりがちです。段階着圧のソックスを使うことで、こうした血流の滞りを軽減し、むくみや疲労の悪化を防ぐことができます。
着圧レベル(mmHg)の違い
着圧ソックスには「圧の強さ」を示す指標として mmHg(ミリメートル水銀柱) が使われます。この数値が高いほど締め付けが強く、サポート力も大きくなります。
一般的には以下のように分類されます。
10~20mmHg程度 | 軽度のむくみや疲労対策向け。市販品に多く、日常生活でのケアに適しています。 なお、市販品のパッケージでは 約13〜27hPa と表示されることが多いため、実際の商品を選ぶ際にはこの数値を目安にすると分かりやすいでしょう。 |
20~30mmHg程度 | 立ち仕事や長時間の移動で足が重だるくなりやすい方におすすめ。スポーツ用のソックスにもよく採用されています。 |
30~40mmHg程度 | 医療用(弾性ストッキング)として用いられ、下肢静脈瘤やリンパ浮腫の治療に使われます。基本的には医師の指示が必要です。 |
医療用と市販品の違い
着圧ソックスには、大きく分けて「医療用(弾性ストッキング)」と「市販品」の2種類があります。それぞれ目的や対象者が異なるため、使い分けを理解しておくことが大切です。
- 市販の着圧ソックス
主に「足のむくみ対策」や「美容目的」として販売されており、10〜20mmHg程度の軽めの圧が中心です。立ち仕事やデスクワークで夕方に足が重だるくなる方、冷えや軽度のむくみを感じる方に適しています。比較的安全に取り入れられますが、既往症がある方は注意が必要です。 - 医療用着圧ソックス(弾性ストッキング)
下肢静脈瘤、リンパ浮腫、術後の血栓予防など、疾患の治療や予防を目的に使用されます。30mmHg以上の強い圧が設定されることも多く、基本的には医師の診断・指示に基づいて使用するのが前提です。適切に使えば治療効果が期待できますが、誤った使用は血流悪化を招く可能性もあります。
目的別!着圧ソックスの選び方
着圧ソックスは種類が豊富で、使用シーンに合わせて選ぶことが大切です。目的やライフスタイルに応じて、以下のようにタイプを選び分けると効果的です。
立ち仕事・座りっぱなしにおすすめ
長時間同じ姿勢を続けていると、ふくらはぎに血液が溜まりやすく、足のむくみやだるさが出やすくなります。特に薬剤師や販売員、事務職などは、夕方になると足が重く感じることも多いでしょう。
こうしたケースには ハイソックスタイプの着圧ソックス が適しています。足首からふくらはぎまでをしっかりサポートしてくれるため、血液の流れを助け、むくみを予防する効果が期待できます。靴下感覚で取り入れられるので、仕事中でも自然に使用できるのが大きな利点です。
冷えや全体的なむくみに対応
足首だけでなく下半身全体にむくみや冷えを感じる方には、タイツやストッキングタイプの着圧ソックスが適しています。足首から太ももまで広い範囲に段階的な圧をかけることで、血流をスムーズにし、下半身全体をサポートしてくれます。
特に冷房の効いた室内で長時間過ごす方や、下半身の冷えが気になる方におすすめです。保温効果と着圧効果を兼ね備えているため、むくみ軽減だけでなく冷え予防にもつながります。
就寝時のケアに使う場合
日中用の着圧ソックスは圧力が強めに設計されているため、就寝時には適していません。睡眠中は血流が穏やかになるため、締め付けが強すぎると逆に循環を妨げてしまう恐れがあります。
そのため、就寝専用に設計された低圧タイプを選ぶのがおすすめです。心地よいソフトな着圧で足を優しく支え、翌朝の「足の軽さ」につながります。パジャマや寝具との相性を考えて、肌触りが良く通気性のある素材を選ぶと快適に使えます。
スポーツによる疲労回復やパフォーマンス向上
ランニングや運動後のリカバリーには、スポーツ用の着圧ソックスが効果的です。筋肉の振動を抑えてエネルギー消費を効率化し、疲労の蓄積を防ぎます。実際にマラソン選手を対象とした研究では、着圧ソックスを使用した群は乳酸の除去が早まり、翌日の筋肉痛も軽減したと報告されています。
また、運動中はパフォーマンス維持、運動後は回復促進というように、シーンに応じた役割を持つのも特徴です。スポーツ用は通気性やフィット感にも配慮されており、長時間の使用でも快適に取り入れられる点もメリットです。
まとめ
着圧ソックスは、段階着圧や着圧レベルの違いを理解し、目的に合わせて使い分けることが大切です。 むくみや疲労の軽減、冷え対策、スポーツ時のサポートなど用途は幅広く、正しく選ぶことで効果を最大限に発揮できます。
参考文献:The National Center for Biotechnology Information/Journal of Strength and Conditioning Research
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