心不全患者のフォローアップ 服薬指導で確認する項目と受診勧奨の目安
2026.09.17

心不全患者への服薬指導では、薬の服用状況だけでなく、体重の変化や息切れ、むくみなど、心不全の増悪につながる兆候を確認することが重要です。
特に退院後しばらくは、心不全が再増悪しやすい時期です。病院から「心不全薬剤管理サマリー」などで情報提供を受けた場合には、調剤後も電話などで患者の状態を確認し、必要に応じて受診勧奨や医師への情報提供につなげます。
この記事では、心不全患者への服薬指導で確認したい項目や治療薬の説明ポイント、受診を勧める体重・症状の目安を整理します。あわせて、調剤後薬剤管理指導料2の算定要件や、心不全フォローアップシートの活用方法についても解説します。
目次
株式会社医学アカデミー所属
心不全患者の服薬指導で確認する項目
心不全患者の服薬指導では、体重、血圧、脈拍数、心不全の症状、日常生活を確認します。あわせて服薬状況も確かめます。
確認する場面は、窓口だけではありません。調剤後に電話をかけて、服用状況と副作用の有無を確かめます。体重の増減、塩分摂取、飲水の状況など、薬学的管理に密接に関係する情報も集めることが望まれます※1。
体重と脈拍は変化を、血圧は値と症状を確認する
体重や脈拍を確認するときは、その日の値だけでなく、前回からどのように変化しているかにも注目します。患者には心不全手帳などに記録してもらい、受診時に持参するよう伝えましょう。
体重が数日で急に増えている場合は、体液貯留による心不全の増悪が疑われます。一方、数か月かけて緩やかに減少している場合は、低栄養の可能性も考えられるため、食事量や食欲もあわせて確認します。
血圧は、その時点の値に加えて、ふらつきや立ちくらみなどの症状がないかを確認します。家庭血圧が高い場合は、ACE阻害薬・ARB・ARNI、MRAなどの治療内容を確認し、あわせて減塩の状況も聞き取りましょう。血圧が低く、立ちくらみなどの症状がみられる場合は、必要に応じて処方医への情報提供や相談につなげます。
脈拍が安静時に急に増えている場合は、新たな不整脈や心不全の増悪も考え、動悸や息切れの有無を確認します。徐脈に立ちくらみなどの症状を伴う場合は、β遮断薬の服用状況や処方内容を確認し、必要に応じて処方医へ情報提供しましょう。
息切れ・咳・浮腫は心不全の増悪を疑うサインとして確認する
息切れが以前より強くなっていないかを確認します。特に、安静時の息苦しさや夜間の症状などがみられる場合は、心不全の増悪を疑い、受診の必要性を検討します。夜間、寝ている間に出る咳も、増悪を疑う手がかりの一つです。
一方、痰を伴わない咳では、ACE阻害薬による副作用の可能性も考えます。服用開始時期や症状の経過を確認し、必要に応じて処方医への情報提供や薬剤変更の提案につなげましょう。
足の浮腫がみられる場合は、塩分・水分の摂取状況や利尿薬の服用状況、体重の変化をあわせて確認します。体重増加を伴う場合は、体液貯留による心不全の増悪も考えられるため、必要に応じて処方医への情報提供や治療内容の相談につなげます。
また、浮腫は心不全だけでなく、カルシウム拮抗薬など薬剤の影響によって生じることもあります。服用薬もあわせて確認しましょう。
食事・睡眠・排便など日常生活の変化も確認する
日常生活の変化から、心不全の増悪や薬の影響に気づけることがあります。
SGLT2阻害薬を服用している患者では、感染症の兆候がないかにも注意します。症状の有無や日常生活の様子を確認し、必要に応じて受診につなげましょう。
食欲の低下は、食事制限の影響だけでなく、心不全の増悪に伴ってみられることもあります。腹部膨満感など、ほかの症状もあわせて確認します。
不眠を訴える場合は、睡眠薬の使用状況だけでなく、気分の変化や睡眠時無呼吸症候群の可能性など、睡眠を妨げている要因がないかを確認します。
便秘の場合は、排便時のいきみによる負担にも注意し、排便状況や使用している下剤などを確認します。下痢がみられる場合は、脱水や電解質異常につながる可能性があるため、下剤や利尿薬などの服用状況を確認し、必要に応じて処方医への情報提供や相談につなげましょう。
服薬状況は残薬や管理方法も含めて確認する
服薬状況の確認の際は、残薬と患者からの申告をもとに、指示どおり飲めているかを確認します。家族などが服薬管理に関わっている場合は、実際の服薬状況や管理方法についても聞き取りましょう※2。
また、他院から処方されている薬も確認し、心不全への影響や相互作用がないかを確認します。
服薬アドヒアランスが低下する背景には、認知機能の低下や支援者の不足、経済的な事情などが関係していることもあります。飲めていないことだけを見るのではなく、その理由まで確認することが大切です。
病院から心不全薬剤管理サマリーが届いている場合は、服薬管理者や管理方法の欄も確認します。本人が管理しているのか、家族が関わっているのか、一包化や服薬カレンダーなどを利用しているのかを把握し、その患者に合った服薬支援につなげましょう。
※1 出典:厚生労働省「調剤報酬点数表に関する事項(保医発0305第6号 別添3)」(2026年9月7日閲覧)
※2 出典:日本心不全学会・日本薬剤師会「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」(2026年9月7日閲覧)
心不全治療薬は目的を分けて患者に伝える
心不全の薬は、症状を改善する薬と予後を改善する薬の2つに分かれます※1。
症状を改善する薬と予後改善を目的とする薬に分けて説明する
心不全の治療薬は、それぞれの役割を分けて説明すると患者にも理解してもらいやすくなります。
利尿薬は、体内にたまった余分な水分を減らしてうっ血を改善するために使用されます。息切れやむくみなどの症状が改善するため、患者自身が効果を実感しやすい薬です。
一方、心不全の再入院や予後の改善を目的として使用される薬もあります。左室駆出率(LVEF)が40%以下の心不全では、ACE阻害薬・ARB・ARNIのいずれか、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬が治療の中心となります。
LVEFが41〜49%、または50%以上の場合も、症候性心不全に対してSGLT2阻害薬が推奨されています。
薬ごとの役割を整理して伝えることで、「症状がないのになぜ薬を飲み続けるのか」という患者の疑問にも説明しやすくなります※2。
効果を実感しにくい薬ほど、服用を続ける理由を伝える
心不全治療薬のなかには、服用していても患者自身が効果を実感しにくい薬があります。
そのため、「再入院を防ぐため」「心臓の状態を悪化させないため」など、薬を続ける目的をできるだけ分かりやすい言葉で伝えましょう。症状が改善していても、自己判断で中止しないことをあわせて説明します。
病院から届く心不全薬剤管理サマリーに退院時のBNPやNT-proBNPなどが記載されている場合は、症状や検査値の経過も参考にしながら、治療の必要性を説明する際に活用できます。
症状が落ち着いている患者では、薬の追加や増量に抵抗を感じることもあります。患者がどのように受け止めているかを確認し、治療の目的や服薬状況について必要な情報を処方医と共有しましょう※1。
左室駆出率が改善しても自己判断で薬を中止しない
心不全では、治療によって左室駆出率(LVEF)が改善することがあります。初回のLVEFが40%以下で、その後10ポイント以上改善し、40%を超えた場合は、LVEFが改善した心不全として扱われます。
左室駆出率が改善しても、治療薬が不要になったとは限りません。
拡張型心筋症では、LVEFが改善した後も、心不全治療薬を短期間で減量・中止すべきではないとされています※2。
患者から「心臓の状態が良くなったので、もう薬は必要ないのでは」と相談された場合は、自己判断で中止しないよう説明し、治療継続の必要性について処方医と確認するようにしましょう。
※1 出典:日本心不全学会・日本薬剤師会「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」(2026年9月7日閲覧)
※2 出典:日本循環器学会/日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」(2026年9月7日閲覧)
心不全治療薬の副作用と用量調整で確認したいポイント
心不全治療薬では、血圧や腎機能、カリウム値、脈拍などを確認しながら治療が調整されます。薬局でも、処方変更後の症状や副作用の有無を確認し、必要な情報を処方医へ共有することが重要です。
血圧が低くても自己判断で中止しないよう伝える
ACE阻害薬・ARB・ARNI、β遮断薬、MRAは、血圧を下げることだけを目的とした薬ではありません。血圧が高くない患者でも、予後や左室駆出率の改善を目的として開始・増量されることがあります。
そのため、血圧が低めであっても自己判断で中止しないよう伝えましょう。
収縮期血圧が100mmHg未満の場合は、ふらつきや立ちくらみなどの低血圧症状がないかを確認します※1。症状の有無や家庭血圧の状況を把握し、必要に応じて処方医と情報を共有しましょう。
カリウムとeGFRの値で併用の注意が変わる
カリウム値とeGFRを確認する
ACE阻害薬・ARB・ARNI、MRAでは、高カリウム血症に注意が必要です。特に、カリウム値が5.0mEq/L以上、またはeGFRが30mL/min/1.73m²未満の場合は、より慎重な確認が必要になります※1。
病院から届く心不全薬剤管理サマリーに退院時の検査値が記載されている場合は、カリウム値やeGFRも確認しましょう。
高カリウム血症では、吐き気、筋力低下、徐脈などがみられることがありますが、症状だけで高カリウム血症を判断することは困難です。検査値を確認できない場合は、生野菜や果物などの摂取状況、便秘の有無、NSAIDsを含む他院からの処方薬なども確認します。
水分摂取量は一律に制限せず、患者の状態に応じて確認する
代償期の心不全では、1日の水分摂取量を1〜1.5Lとする水分制限が弱く推奨されています※2。
一方、重症心不全で希釈性低ナトリウム血症をきたしている場合などを除き、すべての患者に厳格な水分制限を行うことは推奨されていません。
水分摂取量が多い場合は、単に制限を勧めるのではなく、その背景も確認します。トルバプタンによる高ナトリウム血症や、抗コリン作用をもつ薬による口渇など、薬剤の影響がないかにも注意しましょう。
増量後は数日後に、減量後は増悪に注意する
心不全治療薬が追加・増量された場合は、数日後など比較的早い時期に、副作用や体調の変化をフォローアップします。
SGLT2阻害薬以外の予後改善を目的とする薬は、患者が耐えられる範囲で推奨用量まで増量することが基本です。増量にあたっては、血圧、カリウム値、腎機能、脈拍などが判断材料になります。
一方、心不全が増悪している場合には、β遮断薬の増量によって状態を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
また、心不全治療薬を減量・中止した後は、中長期的な予後や心機能だけでなく、短期間で心不全が増悪する可能性にも注意します。たとえば、腎機能の悪化を理由に利尿薬を減量した場合、腎機能が改善しても、うっ血が悪化することがあります。
処方変更後は体重や浮腫、息切れなどの変化を確認し、必要に応じて処方医への情報提供につなげましょう。
※1 出典:日本心不全学会・日本薬剤師会「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」(2026年9月7日閲覧)
※2 出典:日本循環器学会/日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」(2026年9月7日閲覧)
心不全の増悪を疑う症状と受診勧奨の目安
心不全患者の体調変化を確認し、増悪が疑われる場合は、必要に応じて受診を勧めるとともに、受診中の医療機関へ情報提供します※1。窓口や電話で確認して終わらせず、その後の受診や医療機関との連携まで意識することが重要です。
安静時の息苦しさや夜間の症状は早めの対応につなげる
次のような症状がみられる場合は、心不全の増悪を疑い、早めの受診を検討します※2。
- 安静にしていても息苦しい
- 夜間に咳が出て眠れない
- 横になると息苦しく、座ったり起き上がったりすると楽になる
- 血圧が普段と比べて著しく高い、または低い
- 立ち上がったときにめまいやふらつきがあり、転倒した
症状の程度や経過を確認し、緊急性が高いと判断した場合は、速やかな受診につなげましょう。
3日間で2kg以上の体重増加は増悪のサインとして確認する
心不全患者では、短期間の体重増加が体液貯留のサインになることがあります。
患者や家族には、呼吸困難や3日間で2kg以上の体重増加がみられた場合には、心不全の増悪を疑い、受診について医療機関へ相談する必要があることを説明しておきましょう※3。
あわせて、「すぐに受診すべき変化」と「次回予約を待たずに相談・受診したほうがよい変化」をあらかじめ伝えておくと、患者や家族も対応しやすくなります。
症状が徐々に悪化している場合も次回受診を待たない
体重増加、下肢のむくみ、動いたときの息切れ、疲れやすさ、だるさなどが徐々に悪化している場合も、心不全の増悪を疑います※2。
このような変化がみられた場合は、次回の予約日を待たずに主治医へ相談するよう勧めましょう。
薬局で緊急性が高いと判断した場合は、患者に受診を勧めるだけでなく、必要に応じて薬局からかかりつけ医へ直接連絡し、確認した症状や経過を共有します。
※1 出典:厚生労働省「調剤報酬点数表に関する事項(保医発0305第6号 別添3)」(2026年9月7日閲覧)
※2 出典:日本心不全学会・日本薬剤師会「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」(2026年9月7日閲覧)
※3 出典:日本循環器学会/日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」(2026年9月7日閲覧)
心不全患者に算定できる調剤後薬剤管理指導料2
慢性心不全患者に対して調剤後も服薬状況や副作用などを確認し、必要な指導と処方医への情報提供を行った場合、一定の要件を満たせば「調剤後薬剤管理指導料2」を算定できます。
点数は60点で、算定できるのは月1回までです。
対象となる患者を確認する
対象となるのは、心疾患による入院歴があり、作用機序の異なる循環器官用薬など複数の治療薬が処方されている慢性心不全患者です※1。
対象患者に該当するかどうかは、日本循環器学会・日本心不全学会が作成するガイドラインなどを参考に判断します※2。
フォローアップを始めるには患者の同意などが必要
対象患者であれば、薬局の判断だけで直ちに算定できるわけではありません。
フォローアップを開始できるのは、医療機関から求めがあった場合、または患者・家族等から求めがあり、保険薬剤師が必要性を認めたうえで処方医の了解を得た場合です。
いずれの場合も、患者または家族等の同意を得てから実施します※1。
電話等での確認・継続指導・文書提供を行う
算定には、次の3つの対応が必要です。
・調剤後に、服用状況や副作用の有無などを電話等で確認する
・確認した内容に応じて、必要な服薬指導を継続して行う
・処方医へ必要な情報を文書で提供する
処方医への情報提供では、確認した服薬状況や副作用を書き写すだけではなく、薬学的な分析・評価を加えます。必要に応じて、処方に関する提案も行います。
確認方法には電話のほか、情報通信機器を用いた方法も含まれます。ただし、一律の内容を電子メールで一斉送信するなど、一方的な情報提供だけでは継続的な服薬指導を実施したことにはなりません。
医療従事者間でICTを用いて服薬状況などを共有した場合は、処方提案などを行った日時や内容を記録し、必要に応じて確認できるようにしておきましょう。
算定には施設基準の届出も必要
調剤後薬剤管理指導料2を算定できるのは、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の2〜5のいずれかを届け出ている保険薬局です※2。
同加算は1〜5の区分がありますが、1のみの届出では調剤後薬剤管理指導料2を算定できません。
自薬局がどの区分を届け出ているか分からない場合は、管理薬剤師や本部などに確認しておきましょう。
調剤当日や次回処方箋受付日の確認では算定できない
電話等による確認を、対象となる薬を調剤した当日、または次に処方箋を受け付けた日に行った場合は、原則として算定できません。
ただし、次の場合は除かれます。
- 受診勧奨によって患者が医療機関を受診し、その処方箋を持参した場合
- フォローアップのきっかけとなった処方箋を発行した医療機関とは別の医療機関から処方箋が発行された場合
フォローアップは、あらかじめ計画した電話等によって行うことが基本です。電話等で確認することについて、事前に患者の了承も得ておきましょう。
手引き第1版の記載は現行の要件と違う
日本心不全学会と日本薬剤師会が2024年8月に公開した「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」は、2026年度の調剤報酬改定を反映していません※3。
現行制度では、主に次の点が変更されています。
| 項目 | 手引き第1版(2024年8月) | 現行 |
| 届出が要る施設基準 | 地域支援体制加算 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算の2から5までのいずれか |
| 電話等の確認ができない日 | 調剤と同日 | 調剤と同日、およびその次に処方箋を受け付ける日 |
一方、60点という点数、月1回までという算定上限、対象患者の考え方、電話等による確認・継続指導・文書提供という基本的な枠組みは、令和6年度から変わっていません※4。
算定要件については現行の告示・通知を確認し、左室駆出率の区分や水分摂取量などの臨床的な内容については、最新の心不全診療ガイドラインを参照するようにしましょう。
改定の全体像は2026年度調剤報酬改定の背景にある流れの記事もご参考ください。
※1 出典:厚生労働省「調剤点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第三」(2026年9月7日閲覧)
※2 出典:厚生労働省「調剤報酬点数表に関する事項(保医発0305第6号 別添3)」(2026年9月7日閲覧)
※3 出典:日本心不全学会・日本薬剤師会「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」(2026年9月7日閲覧)
※4 出典:厚生労働省「調剤点数表(令和6年厚生労働省告示第57号)別表第三」(2026年9月7日閲覧)
薬薬連携で活用する様式と入手先
心不全患者の薬薬連携では、病院から薬局へ情報を伝える「心不全薬剤管理サマリー」と、薬局から医師へフォローアップ結果を伝える「心不全フォローアップシート」が活用されます。
それぞれ役割が異なるため、どの場面で使う様式なのかを整理しておきましょう。
心不全薬剤管理サマリーで退院時の情報を受け取る
心不全薬剤管理サマリー(退院時薬剤管理サマリー)は、入院中の治療内容や退院時の状態、服薬管理に関する情報などを病院から薬局へ共有するための様式です。
手引きでは、このサマリーが薬局に届いた場合、医療機関または患者からフォローアップの求めがあったものとして扱えるとされています※1。
サマリーが届いていない場合でも、薬局でフォローアップが必要と考えたときは、患者やかかりつけ医に必要性を確認し、連携につなげます。
心不全フォローアップシートで確認結果を医師へ伝える
調剤後のフォローアップで確認した内容を医師へ伝える際には、「服薬情報提供書(兼 心不全フォローアップシート)」を活用できます。
現在配布されている様式には、主に次の項目が設けられています※2。
- 報告に際しての患者同意、フォローアップの対象(本人・家族・その他)
- 確認方法(薬局での聞き取り・電話・在宅訪問・その他)
- 確認された療養上の問題点(服薬管理・セルフケア・体重増加・食事内容・病識や受診行動)
- 確認事項(残薬、むくみ、労作時の息切れ、体重、血圧、食欲低下、過労やストレス、他院に受診・処方された薬)
- 問題点に対するアセスメントと介入
医療機関から薬局への返信欄もあり、薬局からの報告内容に対する確認や、提案を受けて行った対応などを共有できるようになっています。
なお、調剤後薬剤管理指導料2で求められる処方医への文書提供には、心不全フォローアップシートを活用できます。
様式は学会のウェブサイトから入手できる
心不全薬剤管理サマリーと心不全フォローアップシートは、日本心不全学会のウェブサイトから入手できます※1。
PDFやExcel形式で配布されており、患者の状況や薬局で取得できる情報に応じて活用できます。
手引き本文に掲載されている図と、現在配布されている様式では記入欄が異なる場合があるため、実際に使用するときは学会の掲載ページから最新の様式を確認しましょう。
また、様式の著作権は日本心不全学会にあります。改変した様式を広く使用する場合などは、必要に応じて学会事務局へ確認します。
サマリーやトレーシングレポートを含む連携の全体像は、薬薬連携で共有する情報と現場でできることの記事もご参考ください。
※1 出典:日本心不全学会・日本薬剤師会「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」(2026年9月7日閲覧)
※2 出典:日本心不全学会「服薬情報提供書(兼 心不全フォローアップシート)」(2026年9月7日閲覧)
フォローアップを検討する患者と連絡のタイミング
心不全患者のフォローアップは、病院からの情報提供をきっかけに始まることがありますが、対象はサマリーが届いた患者だけではありません。
薬局で患者の状態や治療内容を確認し、再増悪のリスクが高いと考えられる場合には、患者や主治医と連携しながらフォローアップを検討します。
サマリー・処方内容・聞き取りから対象患者を見つける
薬局で心不全患者を把握するきっかけには、次のようなものがあります。
- 退院時薬剤管理サマリーが届いている
- 循環器科から心不全治療薬を含む処方箋が発行されている
- 患者への聞き取りから、心不全の既往や入院歴、症状が分かる
特に、心臓の基礎疾患があり、心不全症状を認めるステージCの患者では、再入院リスクも踏まえてフォローアップの必要性を検討します※1。
また、心筋梗塞や狭心症などの既往がある患者では、心不全の発症や増悪にも注意して経過を確認しましょう。
再増悪リスクが高い患者ではフォローアップをより検討する
手引きでは、次のような患者でフォローアップをより検討することが示されています。※1。
- 心不全による入退院を繰り返している
- 日常生活での注意点について理解が不十分である
- セルフケアのアドヒアランスが不良、自己中断歴がある
- 受診間隔が不定期である
こうした患者では、服薬状況やセルフケアの確認を継続的に行う意義が大きくなります。
フォローアップを開始する際には、その目的や方法を説明するとともに、患者にとって義務ではないことも伝え、同意を得たうえで進めましょう。
退院直後は短い間隔で、その後は状態に応じて調整する
退院して間もない時期は、心不全が再増悪しやすいため、比較的短い間隔でのフォローアップが望まれます。手引きでは、退院直後には1週間ごと、その後状態が安定してきた場合には2〜4週間ごとなどが目安として示されています※1。
ただし、フォローアップの間隔は一律に決めるのではなく、患者の状態や治療変更の有無に応じて調整します。
心不全治療薬の追加や増量があった場合は、数日後など早い段階で副作用や体調変化を確認することも検討します。
また、調剤後薬剤管理指導料2を算定する場合は、調剤当日や次に処方箋を受け付ける日は原則として算定できないことにも注意が必要です。
算定できる回数は月1回までですが、フォローアップの頻度そのものを算定回数に合わせて減らすのではなく、患者の状態に応じて必要な確認を行いましょう。
※1 出典:日本心不全学会・日本薬剤師会「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き 第1版」(2026年9月7日閲覧)
心不全患者の服薬指導でよくある質問
1週間ごとに電話をしたら毎回算定できますか
調剤後薬剤管理指導料2を算定できるのは、月1回までです。
退院直後など、患者の状態に応じて1週間ごとにフォローアップを行った場合でも、同じ月に複数回算定することはできません。
一方で、フォローアップの頻度は算定回数に合わせて決めるものではありません。患者の状態や再増悪リスクに応じて必要なタイミングで確認し、そのうち算定要件を満たす対応について月1回算定する、と考えると分かりやすいでしょう。
左室駆出率が改善したら薬を減らせますか
左室駆出率が改善しても、自己判断で心不全治療薬を減量・中止することは勧められません。
患者から相談を受けた場合は、現在の治療内容や症状を確認したうえで、処方医に相談します。
減量や中止が決まった場合は、その後の体調変化にも注意が必要です。体重増加、浮腫、息切れなど心不全の増悪を示す症状がないかを確認し、患者にも日々の観察ポイントをあらためて説明しましょう。
また、中止した薬によって確認したい項目は異なります。たとえば、ACE阻害薬・ARB・ARNIやMRAを中止した場合は血圧やカリウム値、β遮断薬を中止した場合は脈拍などの変化にも注意します。
異変がみられた場合は、必要に応じて処方医へ情報提供します。
心不全患者の服薬指導で押さえておきたいポイント
心不全患者への服薬指導では、服薬状況だけでなく、体重、血圧、脈拍、息切れや浮腫などの症状、食事や日常生活の変化まで確認することが重要です。
特に、3日間で2kg以上の体重増加や安静時の息苦しさなど、心不全の増悪が疑われる変化を認めた場合は、必要に応じて受診を勧め、処方医へ情報共有します。
また、心不全治療薬は、症状を改善する薬と予後改善を目的とする薬で役割が異なります。症状が落ち着いていても自己判断で中止しないよう、服用を続ける目的を患者に分かりやすく説明しましょう。
退院後など再増悪のリスクが高い時期には、調剤後も電話等で状態を確認し、必要な服薬指導や医師への情報提供につなげます。調剤後薬剤管理指導料2を算定する場合は、対象患者や施設基準、実施内容などの要件も確認しておきましょう。
心不全患者のフォローアップでは、病態や治療薬に関する知識に加え、患者の変化に気づき、医療機関へつなぐ視点が欠かせません。
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